明日も耕す 農業問題の今 食料安全保障論の正体は 自民総裁選候補、声高に
週刊『三里塚』02頁(1168号02面04)(2025/09/22)
明日も耕す 農業問題の今
食料安全保障論の正体は
自民総裁選候補、声高に

9月22日、自民党総裁選が告示され、事前に出馬表明した5人が立候補した(写真)。総裁選での農政をめぐる議論は米問題を中心になされるだろうが、マスコミ等も巻き込んだ世論形成には徹底対決が必要だ。
自民党総裁選を前にした論議で特徴的なことは、米問題について単に価格高騰や米不足に対する対策というだけでなく、食料安全保障から論じていることだ。
高市早苗は政権公約で食料安全保障の強化を掲げ、「食料自給率100%をめざす」「すべての田畑をフル活用できるための環境整備をしっかりと行う」と述べた。
小泉進次郎は雑誌のインタビューで「食料安全保障が前面に出てきており、米政策をどうするかが重要」と述べた。
自民党は、政府が進める「水田政策の見直し」に意見を反映させるために「農業構造転換推進委員会」を新設し、9月10日、初会合を開いた。
江藤拓委員長(前農林水産相)は「国を守るために食料安全保障を確立し、国民に安心していただけるよう議論を進めていきたい」と強調。
国民的な議論?
党食料安全保障強化本部長を務める森山裕幹事長は「食料安全保障の一丁目一番地はいかに主食の米を国民に届けられるか」と述べている。こうした動きに対して、日本農業新聞の社説は「生産者、消費者がともに安心できる米政策の確立へ、機運は過去になく高まっている。国民的な議論へ、総裁選でその先鞭(せんべん)をつけてほしい」とする。
この「国民的な議論」がくせ者だ。たしかに議論は百出するかもしれないが、あらかじめ食料安全保障を是とする議論にとどまるなら、それは戦争総動員の「世論」形成につながるだけだ。
ここで小欄でもたびたび引用させて頂いた鈴木宣弘・東京大学大学院教授に苦言を呈したい。
戦時体制づくり
鈴木教授は、3年前に設立された一般財団法人「食料安全保障推進財団」の理事長を務める。 同財団のサイトのトップには「国民の食料やその生産資材の調達への不安は深刻の度合いを強め、私達は、間違いなく食料安全保障の危機に直面しています」「社会全体が支え合わなくては、有事は乗り切れません」「国際的な食料需給情勢が不安定化を強める中、食料安全保障は国民国家存立の要であることに鑑み……」といった言葉が並ぶ。どれだけ農民と行動を共にし、自民党農政を舌鋒(ぜっぽう)鋭く批判しても、こうした食料安全保障推進の立場では、「国を守る」「国益を守る」「国民の生命と財産を守る」という理屈の下に結局、中国侵略の戦時体制づくりの片棒を担がされることにしかならない。
食料安全保障は、文字通り戦争のための安全保障であり粉砕あるのみだ。総裁選の議論を利用した戦時体制づくりを許すな!