十亀弘史の革命コラム-46- 過去の加害をえぐり出す
十亀弘史の革命コラム-46-
過去の加害をえぐり出す

塚本晋也監督の映画「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」を見てきました。元米軍海兵隊員のアレン・ネルソンがベトナム戦争で犯したすさまじい侵略加害の体験に苦しみ抜き、多くの人に自己の加害行為をつぶさに告白、講演するようになって行くという、実話に基づく作品です。基地をなくす運動の一環として沖縄でも何度も講演を重ねています。枯葉剤の後遺症によって62歳で亡くなったネルソン自身による同名の自伝的著書も出版されています。
映画を見て感じたのは、まず迫真の戦場描写のすごさです。カメラが人物に密着しているショットが多いせいか、切迫した臨場感を感じさせます。戦場で重ねられる残忍極まる殺人がリアルに映し出され、戦争は無残な人殺しそのものだと、改めて強く胸に打ち込まれます。そしてそこでは他のベトナム戦争映画とは決定的に違って加害の視点が一貫して維持されています。戦後PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむネルソンの描写では、過去の加害を自らえぐり出さなければ人は解放されたりしない、ということが鮮明に提示されます。血債の支払いはまず、侵略戦争の中で自分がどれほど残虐であったかを徹底して把握する苦しい行為から始める外にない、ということだと受け止めました。
映画には一つ決定的なセリフが出てきます。拷問されているベトナムの兵士が叫ぶのです。ネット上の予告編から引用します。「なぜ他の国に来て我々を殺すんだ。アメリカで戦え。真の自由のために!」。端的にいえば、侵略を内乱に転化しろ、の叫びです。このセリフこそがこの映画の核心の主張ではないでしょうか。明確に反戦をテーマにしたこの作品は、いまの状況下、東京で2館だけと上映館を限られましたが、私が見たキノシネマ新宿は満席で、映画が終わると多くの席から拍手が起きました。
しかし、映画はそのままなすべき実践への道筋を示すものではありません。映画への拍手は、それだけで終わればなんの反戦行動にもなりません。拍手の人たちが、11・1労働者集会に始まり22日の大集会とデモへと進む11月の反戦闘争に参加するよう強く願わざるを得ません。その闘いに接すれば、今進行している戦争が具体的にアメリカ帝国主義と日本帝国主義による中国侵略戦争であり、それを実際に止めるためには帝国主義を打ち倒す以外にないと、徹底してつかみとれるはずです。
(そがめ・ひろふみ)
2026.10.5