十亀弘史の革命コラム-34- 戦争プロパガンダを撃つ
十亀弘史の革命コラム-34-
戦争プロパガンダを撃つ

戦争を進めるために支配者が行うプロパガンダにはいくつかの定型があるのです。そのことを明らかにしたのが、『戦争プロパガンダ10の法則』(アンヌ・モレリ著、草思社)です。2002年の出版ですが、中身は古びていません。著者は指摘しています。戦争を始める国家元首は、「必ずといっていいほど、おごそかに、まずこう言う。『われわれは、戦争を望んでいるわけではない』」。そしてそれに続く言葉は常に、「しかし、敵が一方的に戦争を望んだ」なのです。
一例として、1939年9月に、ドイツのリッベントロップ外相はポーランドへの侵攻について、次のように述べています。「総統(ヒトラー)は、戦争を望んではいない。だが、不本意ながらそうせざるをえなかったのだ。総統には戦争か平和かを選ぶ余地がなかった。戦争を選んだのはポーランドだ」。戦争プロパガンダの最初の法則は常に、「戦争はしたくないのに敵が悪い」と声高に繰り返すことです。
日本でもいま、事実を逆さまに描き出す同じようなプロパガンダが、社会に蔓延(まんえん)しています。〈「権威主義」国家の中国が「台湾有事」を引き起こすなどして、日本の安全を侵そうとしている。だから軍事力を強化するしかない〉、もっと端的には〈攻めて来る中国から祖国を守ろう〉といった論調です。
その主張を前提にして、例えば朝日新聞は次のように書くのです(9月19日の記事)。「(中国に対する)自衛隊と各国軍との連携が進み、既成事実化は後戻りできないレベルになっている。......自衛隊は何をどこまですべきか。......現実に即したルールを検討すべきだ」
一方で「平和を」と繰り返しながら、戦争準備の「既成事実」には逆らわず、避けがたい戦争の「現実に即す」べきだ、と言うのです。
私たちは帝国主義が何であるかをつかんでいます。帝国主義は、危機に陥れば、それが全く非合理的な打開策であったとしても、不可避に戦争を準備し、開戦へと突き進みます。為政者やマスコミがいま「防衛のためだ」と百万遍も繰り返すのは、日本帝国主義がまさに眼前において、再びの中国侵略戦争に突入しようとしているからです。日帝を打ち倒さない限りその戦争を止めることはできません。11・2全国労働者集会の総決起へ、労働者の力で帝国主義を打ち倒す大いなる道を切り開いていきましょう。本当の反戦の現場はそこにあります。
(そがめ・ひろふみ)
2025.10.20