「総力戦」にらむ自衛隊統合演習 全国の民間空港・港湾を軍事利用

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週刊『前進』04頁(3418号03面03)(2025/10/20)


「総力戦」にらむ自衛隊統合演習
 全国の民間空港・港湾を軍事利用


 陸海空自衛隊合わせて5万2300人を動員する過去最大規模の自衛隊統合演習が、10月20日から31日にかけて行われる。2年前の実動演習から2万人以上も動員数が増え、参加する艦艇は3倍の60隻に、航空機も210機から310機へと大幅に増える。
 米軍からは在日米軍を中心にインド太平洋軍の陸海空の全軍種から5900人が参加する。オーストラリア軍からの参加は230人だが、豪統合作戦本部の人員が派遣されており、決して小さくない意味を持っている。日本を「最前線」として、アジア・太平洋を主戦場に中国侵略戦争―世界戦争を遂行するための巨大演習だ。
 今回は自衛隊統合作戦司令部が発足して初の自衛隊統合演習であり、米軍嘉手納基地(沖縄県)に日米の共同指揮所を設置して指揮所訓練を実施することも盛り込まれている。この訓練が想定する戦場のイメージは、米日帝国主義が一体化して数万もの軍隊を南西諸島に集中し、住民を巻き込み生活の場を踏みにじりながら激しい戦闘を展開するというものであり、絶対に許してはならない。
 自衛隊はこの演習で、民間空港や港湾の軍事利用に加え、生活の場すら戦場とすることにますます踏み込んでいる。PFI(公共事業に民間の能力を利用する制度)などによる民間船舶を使って、北海道から沖縄まで各地の港湾を経由してミサイル・弾薬とその発射機などの物資や兵器を運ぶ大規模訓練が行われ、また民間航空機を利用して自衛隊員が移動。この際には「特定利用空港・港湾」に指定された港湾だけでなく、大分港(大分県)などの重要港湾も使われる。そして南西諸島で対艦・対空戦闘や上陸作戦訓練などが行われるのだ。
 自衛隊は沖縄県に駐留する部隊以外の全師団を「機動師団」に改編、輸送・移動能力を強化してきたが、そこにとどまらず重要インフラの全面的な軍事利用を始めているのだ。深刻な人員不足に苦しむ自衛隊・防衛省はこの間、「部外力の活用」を掲げているが、その内実は大日本帝国さながらの総力戦体制を構築することにほかならない。
 民間空港では、新たに特定利用空港に指定された南紀白浜空港(和歌山県)が初めて使われ、戦闘機の連続離着陸訓練(タッチ・アンド・ゴー)を実施、同様の訓練は奄美空港(鹿児島県)、徳之島空港(同)でも行われる。鹿児島空港(同)では戦闘機の離着陸だけでなく弾薬搭載訓練も実施される。これらはすべて「自衛隊の基地が使用できない事態を想定」している。在日米軍や自衛隊の基地も無事では済まない中国侵略戦争の激しさを重々承知しながら、米軍・自衛隊はこれらの取り組みを進めているのである。
 さらに、奄美群島では広場や公園など生活空間が広く訓練場とされる。地対艦ミサイル部隊隷下のレーダー部隊のゴルフ場への展開や、防空ミサイル部隊とその指揮所の海浜公園への展開などが予定されている。
 反戦・反基地闘争の爆発で戦争を阻止しよう。

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2025年自衛隊統合演習の要点
①自衛隊5万2300人、米軍5900人、オーストラリア軍230人が参加。過去最大規模
②民間空港や港湾、民間の船舶や航空機を用いた、北海道から沖縄までの大規模な移動・輸送訓練。負傷者の後方輸送や医療物資の戦場への投下・現地での戦時医療訓練も
③「自衛隊の基地が使用できない事態」を想定して、南紀白浜空港・奄美空港・徳之島空港で連続離着陸訓練。鹿児島空港では弾薬搭載訓練も実施
④島しょへの上陸作戦や対艦・対空戦闘訓練が広く行われ、これらと一体で米軍嘉手納基地で日米共同指揮所訓練を実施

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