日米演習中国侵略の実戦想定 レゾリュート・ドラゴン25 沖縄など日本全土を戦場化
週刊『前進』04頁(3411号02面01)(2025/09/01)
日米演習中国侵略の実戦想定
レゾリュート・ドラゴン25
沖縄など日本全土を戦場化

9月11~25日にかけて日米共同実動演習「レゾリュート・ドラゴン25」が実施されようとしている。中国侵略戦争へ向けて、日本帝国主義がその「前線国家」となり、全土を戦場化しようとしていることが如実に示されている演習が、レゾリュート・ドラゴンだ。これと対決し、全国各地で反戦反基地闘争に立とう。
石垣島で新兵器を初展開
レゾリュート・ドラゴン25には、陸海空自衛隊から約1万2千人、米軍から在日海兵隊を中心に約1900人が参加する予定で、同演習としては過去最大だ。九州・沖縄を中心に、北海道や硫黄島(東京都)が使用される予定だ(図)。着上陸戦闘訓練や対艦戦闘訓練、オスプレイを用いた遠距離輸送と離着陸訓練などが各地で行われる。沖縄では、石垣島で米軍の自律型無人ミサイルシステム「NMESIS(ネメシス)」と短距離防空システム「MADIS(マディス)」の初展開が予定されている。これらは、4月の米フィリピン共同演習で初展開された最新兵器だ。さらに、与那国島でもウクライナ戦争で注目を浴びた高機動ロケットシステム「ハイマース」が初展開される。ハイマースは射程70~300㌔メートル、ネメシスは射程約200㌔の対艦ミサイル攻撃が可能で、マディスは機関砲でドローンに対抗する兵器だ。中国沿岸部など遠く離れた目標を攻撃できる射程1千㌔超の「12式地対艦ミサイル能力向上型」が健軍駐屯地(熊本県)や湯布院駐屯地(大分県)、勝連分屯地(沖縄県)など九州・沖縄のミサイル部隊に優先的に配備されることを考えれば、石垣島と与那国島での新兵器の展開は重大なことだ。主に九州から長距離ミサイルで中国軍の撃破を狙い、それに対する中国軍の反撃と接近を南西諸島(琉球弧)で食い止めることが、この演習が想定する実戦のイメージなのである。
それは、本土のために沖縄を「捨て石」とした、かつての沖縄戦と完全に重なるものだ。徳之島(鹿児島県)で民間の宿泊施設や運動公園、岬など自衛隊や米軍の施設ではない場所を使用する「生地(せいち)訓練」が大規模に準備されていることも、これと一体だ。その中では前泊漁港を利用して、半潜水型無人艇(ALPV)という、機体が水上にほとんど出ない隠密輸送用の無人艇を用いた輸送訓練が行われる。中国軍の激しい反撃が予想される中では、通常の輸送艇は役に立たないと開発されたもので、この訓練自体が南西諸島を地獄のような戦場にたたき込むことを前提としているのである。
自衛隊が主役を担う演習
レゾリュート・ドラゴンは、その特色として「陸上自衛隊の領域横断作戦(CDO)と米海兵隊の遠征前進基地作戦(EABO)を踏まえた連携向上を図る」ことを目的に掲げている。EABOとは2014年に米海兵隊が発表した対中国作戦だ。米軍は01年には中国の軍事戦略を「A2/AD(接近阻止/領域拒否)」、すなわち米軍を中国の領域に近づかせないための軍事力の構築だと定義し、それを突破して中国本土に侵攻するための戦略と手段の検討を進めてきた。EABOはその成果の一つだ。南西諸島に部隊を分散展開し、臨時のミサイル基地の構築を繰り返して反撃をかわしつつ中国軍を攻撃、海上・航空優勢の獲得を目指す。島々は戦場にされ、踏み荒らされる。中国軍の反撃で破壊される前に、米軍・自衛隊が基地構築のために住宅や農地を破壊することが前提の作戦なのだ。まさしく帝国主義軍隊の本質を表す作戦がEABOである。
陸自のCDOとは、米陸軍が対中国作戦のために考案した「マルチドメイン作戦(MDO)」を参考として18年に打ち出された構想で、陸海空自の統合運用を目指したものだ。自衛隊の統合作戦司令部の創設はこの一環である。つまり「CDOとEABOの連携向上を目指す」というレゾリュート・ドラゴンは、米軍の中国侵略作戦を、米日の共同作戦として遂行するための演習なのである。
また、レゾリュート・ドラゴンの初実施は21年12月のことだ。21年とは、4月の日米首脳会談で「台湾海峡の平和と安定」に日米首脳が言及し、米日帝国主義が「台湾海峡有事」に介入する意志を公然と表明した年である。レゾリュート・ドラゴンの開始は、米日帝の中国侵略戦争への本格的突入を象徴している。
重要なことは、この演習の主役は日帝・自衛隊だということだ。その規模は、初回は陸自1400人/米軍2600人だったが、23年には海自・空自が加わって陸海空自5千人/米軍1400人へ拡大、そして今回で自衛隊1万2千人/米軍1900人となった。わずか4年で自衛隊の動員数は8倍超となっている。それは石破政権が韓国からフィリピン、東南アジア全体を戦火に巻き込む「オーシャン構想」を自ら米帝に提起したように、ある意味では米帝よりも積極的に、日帝自身の戦争として中国侵略戦争に踏み出していることを示している。
新司令部が日本に
8月15日、米軍が「マルチドメイン・タスクフォース(MDTF)」の司令部を日本に創設する意向が報じられた。MDTFは、長距離極超音速ミサイルすら保有するミサイル部隊を中心に陸海空の多様な部隊と電子・情報戦部隊も組み込んだ、「中国・ロシアに対抗する中心部隊」と位置付けられる米軍の新部隊である。5部隊が編成されるが、うち3部隊はアジア・太平洋地域に配置される。その司令部を日本に置くというのである。同時に、在韓米軍に「マルチドメイン効果大隊」という偵察衛星や無人機・レーダーなどを用いた情報収集とそれを利用した電子戦・心理戦を担当する部隊(=MDTFの「目と耳」)の配備が検討されていることがわかった。MDTFのミサイル部隊はフィリピンに配備されている。これはつまり、日本を中心に韓国・フィリピンを一つの戦域とする、日帝のオーシャン構想に米帝が対応した動きだ。日帝には、中国侵略戦争への積極的な参戦を通して戦後の制約を突破し、中国侵略の「分け前」を強く要求していく以外に帝国主義としての延命の道はない。だからこそ徹底的に差別・排外主義をあおり、矛盾と不満をそらしながら、破滅的な帝国主義戦争にのめり込もうとしているのである。
反戦闘争を爆発させ、侵略を内乱に転化して日帝を打倒しよう。