明日も耕す 農業問題の今 「コメの輸出を8倍に」!? 市場開放めぐる日米争闘戦

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週刊『三里塚』02頁(1156号02面05)(2025/03/24)


明日も耕す 農業問題の今
 「コメの輸出を8倍に」!?
 市場開放めぐる日米争闘戦


 米は足りないのか、足りているのか。価格は下がるのか、下がらないのか―備蓄米放出の話題が連日テレビ・新聞を賑わせている。そんな折、「米の輸出を今の8倍にする」という驚くべき方針が政府から示された。
 農水省は3月14日、政府備蓄米放出に向けた初回入札で、対象の15万579㌧のうち94・2%となる14万1796㌧が落札されたと発表した。落札平均価格(60㌔当たり)は税込み2万3000円弱。落札分は3月下旬にも店頭に並ぶ見通しだという。
 だが、相場への影響は限定的として効果を疑問視する見方も多く、「そもそも国内需要を満たす生産量が確保されていなかった」「米の生産量自体を増やす必要がある」との指摘も目につく。

現実離れの目標

 こうした状況のさなか、政府は3月11日、2030年のコメの輸出量を、24年実績(4・5万㌧)の8倍に近い35万㌧とする方針を示した。40年には100万㌧を目指す。
 「米が買えなくて困っているのに何が輸出だ」という怒りの声もあるが、これは石破政権が当初から掲げていたことで、かつ将来の話だ。だからと言って今と無関係ではない。
 政府の理屈はこうだ。
 国内の主食用米の需要は右肩下がり。離農が加速しているが、コメの過剰生産能力は解消されていない。そのため補助金を出して、飼料用など主食用以外の稲への転作を促してきた。24年産では、約120万㌧をつくれる水田が主食用以外に充てられていた。こうした余剰生産能力を使い、輸出を拡大したい。そうすれば、米が不足した際には国内に振り向けることもできる……。
 それならなぜ今までやらなかったのか。
 米の輸出は品種、コストなどハードルが高く簡単ではない。何より「余剰生産能力」なるものは、いまや危機に瀕(ひん)している。8倍など生産も輸出もあまりにも夢物語だ。

石破は戦々恐々

 これも3月11日、アメリカのレビット大統領報道官は日本を名指しし、「米に700%の関税を課している」と批判。「相互関税」の対象になる可能性を示唆した。
 林官房長官は、「ミニマムアクセス米は無税だ」などと反論、「意思疎通を図ってまいりたい」と言うが、石破政権は戦々恐々だ。
 アメリカは日本の農作物の市場開放をやらせてきた。米は最後の砦と言われてきたが、ついに「米市場を開放しろ」「アメリカの米をもっと買え」と迫られる。
 石破は米を明け渡してでも、帝国主義としての延命をかけて日米安保を強化する以外にない。
 米の輸出拡大は、余剰生産力のための需要の確保などではない。市場開放をめぐる争闘戦も見据え、規模を拡大しコストダウンして競争に勝ち抜ける農業だけ残ればいいという大転換だ。
 中国侵略戦争遂行のための農業切り捨てを許してはならない。
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