夜間飛行禁止しかない 成田市で航空機騒音講演会 睡眠妨害・健康破壊の深刻さを指摘

週刊『三里塚』02頁(1156号02面02)(2025/03/24)


夜間飛行禁止しかない
 成田市で航空機騒音講演会
 睡眠妨害・健康破壊の深刻さを指摘

(写真 騒音被害を解説【3月15日】)

(写真 騒音計測器)


 成田市内で3月15日に開かれた「航空機騒音から健康を守る講演会」に参加しました。主催は成田市、芝山町、横芝光町、茨城県稲敷市の4市町の住民団体からなる成田空港の航空機騒音から生活を守る周辺住民の会。講師は、騒音による健康影響が専門の田鎖順太北海道大学大学院工学研究院地域環境研究室助教です。
 田鎖さんは、「成田空港周辺の航空機騒音と健康リスク いまと将来」と題し、成田では夜間飛行は禁止する以外ないことを最新の科学的知見を踏まえて発表しました。
 成田空港は内陸空港であるにもかかわらず夜間(22時~翌7時)の時間帯に発着が許可されている国内唯一の空港です。現在の運用時間は朝6時~24時。昼間は一日平均で600回、夜間は同40回の発着があります。
 これを機能強化で運用時間を朝5時~深夜0時半に、発着回数は昼間は2倍の1200回、夜間は約4倍の150回へと大幅な増加が狙われています。
 田鎖さんは、成田空港周辺の騒音曝露の実態調査での測定結果の一例を紹介しました。それによると、21時~7時の騒音曝露では70デシベル以上の騒音回数17・7回/夜、平均騒音レベル52・9デシベルという測定結果でした。
 ちなみに、騒音の評価は平均値を使うため、例えば平均50デシベル(静かな事務所)であったとしても最高レベル70デシベル(2㍍離れたセミの鳴き声)の騒音が30回あったのと同値となります。
 そのため、たとえ騒音のコンターで40デシベルの地域であっても、最大62デシベルの騒音が20回起こることになります。
 60デシベルは掃除機から1㍍の音。目が覚めたり、眠れない可能性が高いことが分かります。
 次に、騒音の人への影響はどうなのか。田鎖さんは、「騒音で目が覚める睡眠妨害が繰り返される場合には環境性睡眠障害と診断されうる。体の恒常性機能の乱れ、とりわけ血圧が上がったまま戻らない状況となり、さらに深刻な疾患(心疾患、肥満、糖尿、うつ)のリスクが高まる」と指摘しました。
 そうしたリスクから最新のWHO(世界保健機関)の文書である欧州環境騒音ガイドラインでは夜間航空機騒音の勧告値は40デシベルとなっており、それでも10%以上の住民が高度の睡眠妨害(週3回以上)を受けること、日本の環境基準は70年代から前進しておらず、夜間騒音を評価する指標すらない驚くべき実態を暴露しました。
 WHOの勧告値に「いま」の成田をあてはめると、平均20デシベル以上騒音レベルを下げなければならないが、各航空機の騒音レベルを20デシベル下げることや、騒音発生回数を99%減らすことは実質不可能であり、現在であっても「夜間飛行は禁止するしかない」と結論付けました。ましてや、機能強化で平均55デシベルという高い騒音曝露を受ける住民は3倍になります。
 講演後に質疑応答が行われ、「夜間飛行の禁止」は周辺住民の生死のかかった問題であり、何としても勝ちとらなければならない課題であることが鮮明になる講演会でした。
(土屋栄作)

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