成田市の廃道処分は違法 団結街道裁判で最終弁論

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週刊『三里塚』02頁(1155号02面01)(2025/03/10)


成田市の廃道処分は違法
 団結街道裁判で最終弁論

(写真 畑と自宅を結んだ団結街道)

(写真 裁判所前で情宣活動)

(写真 閉廷後の報告集会)


 千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で2月28日、団結街道裁判が開かれ、15年続いた裁判が今回で結審した。
 市東孝雄さんの自宅と南台農地を直線で結ぶ団結街道は営農と生活に必要不可欠の道路であったが、「3本目の誘導路をつくるのにじゃまだ」との成田空港会社(NAA)の意を受けた成田市は、2010年6月にこの道を暴力的に封鎖し、格安でNAAに売り渡した。その違法を追及し廃道処分の取り消しを求めてきたのがこの裁判だ。
 被告の成田市は前日付で準備書面を提出し、「市東をはじめ原告には原告適格がない」「封鎖による時間増加は一日10回往復しても60分程度で問題ない」と厚顔無恥の主張を行っている。
 反対同盟顧問弁護団が最終弁論に立った。

機能強化やめよ

 被告成田市の団結街道廃止は、道路法10条1項(一般交通の用に供する必要がなくなったと認める場合においては、当該路線の全部又は一部を廃止することができる)に違反する。団結街道は現に市東さんだけでなく近隣住民に利用され、「1日平均120台前後の車が頻繁に通行しており一般通行に用いられていた重要な道路」だった。そもそも市は交通量すら調べていない。
 適正な手続きもとられていない。市が市議会に廃道の議案を提出したのが10年2月16日。だが、この時点では機能補償道路はまったく完成しておらず、実際に供用されたのは1カ月後だ。
 本件道路廃止は、09年7月の四者協議(国交省、NAA、千葉県、周辺9市町)で決定され、第3誘導路建設に間に合わせようとしたものだ。その責任は空港利益第一の市政を続けてきた小泉一成市長にある。市の中村壽孝元土木部長が法廷で証言したが、何を聞いても「知らない」「分からない」の繰り返しで、証言の体をなしていなかった。それはこの道路廃止を「政治案件」として扱い、小泉市長による住民無視の「専権」で進められたからだ。
 被告成田市とNAAは、成田空港の機能強化に公共性があると主張するが、実際には地元住民の圧殺、生活破壊に他ならない。年間発着30万回化を掲げた第3誘導路建設、そのための団結街道廃道は違憲・違法だ。日本経済の伸びは現在止まったままであり、「増大する航空需要に応えた機能強化が日本経済成長を活性化させる」などというのももはや空語。公共性とは、それなしには人間社会が存在しえないという生存基盤にこそ宿るが、NAAという企業の営利追求のための空港は公共性破壊の存在だ。市は空港依存の現状をやめ、人民の生活と権利を守る自治体の原点に帰るべきだ。
 農業にこそ公共性がある。北総地帯は「首都圏の台所」としての機能を果たしてきた。農林省自身が65年に「三里塚とその周辺の畑作農業は、日本の農業の一つの将来像を託するに値するところと考えられる」と位置づけていた。

騒音厚木の10倍

 農業を営む権利として、「営農権」が憲法的権利の保障として認められなければならない。市東さんの農地における小作権は「営農権」の一側面をなす「生存権的財産権」に当たる。市東さんから農地を奪うことは生存権の否定、そしてそれにとどまらず市東さんの人間性の否定だ!
 さらに弁護団は、機能強化によって生じる騒音の激化が住民の生活と健康に及ぼす影響の甚大さについて具体的に明らかにし、成田の騒音総量は騒音被害が認められた厚木基地の10倍だと突きつけた。「そういう場所と分かって天神峰に戻ってきたのだから市東は人権享有の主体ではない」と切り捨てた被告らの暴言を徹底断罪。違法な団結街道廃道処分を取り消すよう迫り陳述を終えた。
 岡山裁判長は弁論の終結を宣言し、判決日を7月25日、午後2時開廷と指定した。
 裁判報告集会で弁護団は勝利感をもって裁判闘争を総括した。
 動労千葉の中村仁副委員長は、「鉄道を必要とする人が一人いれば廃線からそれを守り抜くのが公共性。一方で空港が『公共性』を振りかざして一人の農民の農業を妨げるならそんな空港はいらない」と訴えた。全学連の渡辺祥英書記次長は「成田を中国侵略戦争に向けた軍事空港にさせない。反戦闘争を爆発させ、耕作権裁判判決勝利、南台農地決戦、団結街道裁判の勝利へ闘う」と決意を表した。
 開廷に先立ち、反対同盟、支援連、現闘、全学連は千葉地裁前情宣活動に立ち、「耕作権裁判で不当判決出すな!」と熱烈に訴えた。

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