連続する航空機大事故 要員不足を抱えつつ機能強化に走る成田で「次」が起きる可能性
連続する航空機大事故
要員不足を抱えつつ機能強化に走る成田で「次」が起きる可能性

胴体着陸で大破
2024年12月29日午前9時、タイ・バンコク発の済州(チェジュ)航空旅客機・ボーイング737が韓国・務安(ムアン)空港で胴体着陸を試み、大破・炎上。乗客乗員179人が死亡する大事故となった。
操縦士は「鳥と衝突した」とメーデー(国際遭難信号)を発して一度着陸を断念し、やり直そうとした。同機は3つの車輪を出せず主翼のフラップも下ろしていない状態で、猛スピードで胴体着陸し、コンクリート製の丘に激突した。事故原因として、バードストライクによるエンジン停止で機内の電力供給が途絶し、車輪やフラップが作動しなくなった可能性が有力視されている。
LCCの済州航空は過密な運航スケジュールを消化しようとしていた。1機あたりの月平均運航時間は418時間で、韓国国内の航空会社中最長とされる。事故機は事故前の48時間で、6カ国を計13回も運航しており、機体の疲労度の高まり、整備不十分などの可能性が指摘されている。
ヘリと空中衝突
本年1月29日午後8時50分(米東部時間)、首都ワシントン近郊のロナルド・レーガン空港付近で、着陸のため滑走路に進入しようとしたリージョナル旅客機が米陸軍のヘリコプターと空中衝突し、いずれもポトマック川に墜落した。旅客機の乗客乗員64人とヘリの搭乗員3人が全員死亡。旅客機はアメリカン航空の子会社が運航するカンザス州ウィチタ発ワシントン行きのボンバルディアCRJ700型機。ヘリはバージニア州フォートベルボア基地の陸軍ブラックホークで訓練飛行中だった。
事故当時、管制塔では2人で担うべき業務を1人でこなしていたことが判明した。同空港付近は「世界で最も管理された空域」と呼ばれ、複数の航空システムの境界になっており、軍ヘリの夜間訓練も日常的に行われていた。事故の24時間前にも同じように空港に着陸しようとした旅客機近くにヘリが現れ、旅客機が急旋回を強いられるという事態が起きていた。
事故必至の成田
国内航空需要においては今「インバウンド回復」傾向の中で、航空機の小型化、便数の増加が進んでいる。だが、国家公務員専門職である管制官の定員は全国で2000人前後のままで、「人は増えず仕事は増える」状況が加速している。
24年1月の羽田空港事故以来、パイロットと管制官の通信は、互いの言葉を100%信頼できないまま続けられている。
実際、航空機事故の大半はヒューマンエラーから生じているのだ。
成田空港の誘導路は、経路が複雑極まりなく、慣れないパイロットは地面に書かれたペイントと地図を見比べながら必死で機を自走させている。その複雑さは、言うまでもなく「未買収地」の存在、つまり三里塚闘争によって強制されたものであり、それでも安全を無視して進められた空港建設、航空行政の結果だ。
そして成田においては、航空管制官のほかにランプコントローラーと呼ばれる「管制官もどき」の職員が配置されている。彼らは、管制官と同じ「航空無線通信士」の資格を持つが、NAAの社員である。管制官は滑走路と誘導路を受け持ち、ランプコントローラーはそれ以外の駐機場付近を受け持つというエリア分けがされる。こういう形で管制業務を補完しないと成り立たないのが欠陥空港成田の特質だ。
慢性的要員不足を抱えながら、既存施設のまま年間34万回への発着枠の増加、そして機能強化による50万回への増加へと突っ走ったその先で、成田に何が起きるかは火を見るよりも明らかだ。成田を廃港に追い込もう。
(田宮龍一)
