明日も耕す 農業問題の今 備蓄米放出で価格安定? 流通を把握できぬ農水省

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週刊『三里塚』02頁(1154号02面04)(2025/02/24)


明日も耕す 農業問題の今
 備蓄米放出で価格安定?
 流通を把握できぬ農水省

(写真 政府の備蓄米)

 江藤拓農相は2月14日、米の流通不足に対処するためとして政府備蓄米を21万㌧放出すると発表した。3月下旬に店頭に並ぶ見通しだというが、はたして米の価格や流通の安定は図れるのだろうか。
 昨年の「令和の米騒動」から米の価格が「高騰」を続けている。
 農水省によれば、2024年産の米は豊作で生産量は前年よりも18万㌧多くなる見込みだった。一方で、農協など主要な集荷業者が昨年末までに確保できた量は21万㌧少ない。これが「消えた21万㌧」と呼ばれ、卸業者や集荷業者が買い占めて抱え込んでいるために価格が下がらないというのだ。マスコミも「買い占め説」を盛んに広めている。
 農水省はこの21万㌧を問題視して、「流通を円滑化するために備蓄米の放出を行う」(江藤農水相)、つまり買い占めをやめさせるために備蓄米を出し、あとでまた買い取ると発表した。価格については、「市場で決まるべきもの」(同)として、責任を取る姿勢は示していない。

そもそも米不足

 流通の問題もあるかもしれないが、そもそも絶対量が足りないのではないのか。
 昨年の「令和の米騒動」はいろいろな理由が挙げられているが、23年秋の主食用米の収穫量は661万㌧。しかし、これに対して需要は705万㌧だったので「40万㌧の米不足」が起きていた。それが徐々に露呈して、夏には店頭から米がなくなった。
 しかし坂本哲志農水相(当時)は新米が店頭に並ぶようになれば高値は収まるとの見通しを示し、かたくなに備蓄米放出を否定した。
 たしかに新米が出ればその時は米が店頭に並ぶだろうが、これは問題の先送りでしかない。民間在庫のデータでは「40万㌧の米不足」が昨年7月からずっと継続していたのだ。それなら取引価格も上がることに不思議はない。21万㌧云々は、多様化する流通形態を農水省が把握できていないだけのことだ。

「減反」をやめず

 2018年の減反政策廃止後も、農水省は主食用米の全国の生産量の「目安」を示し、転作を促して主食用米の生産量を絞ってきた。近年、需給はほぼトントンになっていた。
 このような米を市場にゆだねておきながら需給バランスに介入して価格を安定させようというやり方に無理があるのだ。
 「40万㌧の米不足」を引き起こした最大の要因はここにある。生産農家の減少は加速し、今後もちょっとしたきっかけで米は品薄となる。
 だが農水省はあくまで「米の生産は足りている」と言い、「減反」をやめようとはしない。
 食管法廃止から30年。1995年の食糧法施行、2004年の食糧法改正で今日に至った「米を市場にゆだねる」あり方が根幹から揺らいでしまうからだ。次回、さらにこの点に踏み込みたい。

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