「騒音被害受忍の日々」 横芝光町の農家が陳述 成田夜間飛行差止民事訴訟
「騒音被害受忍の日々」
横芝光町の農家が陳述
成田夜間飛行差止民事訴訟
成田空港騒音被害訴訟団による民事訴訟第4回口頭弁論が1月15日、千葉地裁民事第1部(小林康彦裁判長)で開かれました。
この裁判は、成田空港の周辺住民(成田市、芝山町、多古町、横芝光町、茨城県稲敷市)がNAAに対し、午後9時から午前7時の飛行差し止めと損害賠償を求めるものです。
この日は、横芝光町の原告で農家のAさんが意見陳述に立ちました。成田開港から47年、「空港ができて良かったと思うことは何一つなく、ただただ、様々な被害の受忍を強いられる日々だった」と、4つの損害について怒りを込めて訴えられました。
1つには、昼夜問わず騒音下で過ごす苦痛。農家は持って逃げ出すことのできない農地に根ざした生活をしており、生活の大半が騒音にさらされていること。騒音で庭先での会話ができず、電話でも「今飛行機が飛んでいるから」と断る気まずさ、入浴中も轟音で気が休まらず、農作業のための早め就寝すら妨害されることなど、騒音被害は健康被害を伴って生活を襲っている。
2つには、落下物の被害。37年前、こぶし2つ分くらいの氷の塊が固い庭先にくぼみを作って落ちてきたため住み慣れた宅地を離れ、空港公団との交渉で移転した。しかし、NAAになってからは、「落下物の責任は航空会社。落下物での移転には応じない」という態度で、内陸に飛行場を造り航空機が飛ばざるをえない状況を作った責任を航空会社になすりつけるNAAの姿勢に怒りがこみ上げる。
また、落下物は氷、部品だけでなく、油分もある。落ちた油分によってビニールハウスに無数の小さな穴が開いた。NAAは「飛行機によるものと断定できない」と言うが、ほかに一体どこから来るというのか。排ガスによる農作物への影響もある。命をつなぐ安全な農産物の生産に地べたを這(は)うようにいそしんでいる農業者の汗を内陸空港は無にしている。
3つには、交通状況の悪化。田畑と山林の中に異次元の成田空港という都市が出現した。朝夕の渋滞に加え、渋滞を避けようとする人々が農作業や生活に利用する地域の生活道路を抜け道として使うため、スムーズに圃場(ほじょう)におもむくことがますます困難に。畑の行き帰りに機動隊の検問。47年間に及ぶ時間的ロスを経済換算すれば莫大になる。
4つに、地域住民差別。私たちの集落では中心部が移転対象になり、両端は対象外。分断どころでなく集落の維持すら困難に。同じ騒音レベルでも移転できるところもある。NAAは、「すべて国民は法の下に平等...差別されない」との憲法の理念に従わず、差別と分断を持ち込んでる。
Aさんは最後に、「いいとこなしの空港であると言わざるを得ない」と断罪し、金銭解決ではなく、「午後9時から翌朝7時までの飛行停止を」と訴えました。誰もがそうだと思う説得力ある訴えに傍聴席から大きな拍手が送られました。
千葉県弁護士会館で裁判報告会が行われました。訴訟原告団長から、昨年急逝した原告のお連れ合いが傍聴に参加していることが報告されました。海渡雄一弁護団長は、「昨年一番悲しかったのは彼が亡くなったこと。今も彼がここにいる気がする。彼の分までがんばり、必ず夜間の騒音を差し止める判決をかちとりたい」と決意を述べました。
次回期日は、4月16日(水)午前11時から。多古町の住民が意見陳述に立ちます。飛行差し止め行政訴訟は2月14日(金)午後2時30分から。
(土屋栄作)