気候変動対策めぐり分裂・対立 COP29混迷のまま閉幕 帝国主義打倒以外に未来ない
気候変動対策めぐり分裂・対立
COP29混迷のまま閉幕
帝国主義打倒以外に未来ない
合意は3千億㌦支払いのみ
COP29(国連気候変動枠組条約第29回締約国会議)がアゼルバイジャンの首都バクーで11月に開催された。バクーはロシア革命以前から石油・ガスの生産地で知られている化石燃料の上に立つ産業都市だ。
ここで開催されたCOPの最大の焦点が、気候変動の影響を受ける「グローバルサウス」の国々にたいし、いわゆる先進国(帝国主義国)が、温暖化や異常気象への対策の費用を支払うという議題だった。しかし、この会議は難航し長期化した。会議の途中で、南半球の国々の代表が憤慨して退出するという場面もあった。最終的に年間3000億㌦(約46兆5000億円)を支払うということで合意。このことだけが大きく報道されているが、実際にはこれ以外の合意は何一つ得られないまま閉幕した。
これまでのCOPでは、化石燃料の削減などを協議する場となってきた。しかし、コロナ後以降、そもそもCOPが石油産出国で開催され、化石燃料ロビー団体が1000人以上も参加し、取引を行う場となってきた。(気候変動活動家などは体制内化されるか、沈黙させられている)。他方で、欧州帝国主義は、温暖化対策をするように見せかけて、お互いを欺こうとする争闘戦の場ともなってきた。もはやCOPは気候変動対策で一致するという姿勢すら見せなくなっている。
今回のCOPでは、さらにトランプの登場によって一挙に混迷をきわめた。「気候変動はすべてでっち上げ」と言い放つトランプは、パリ条約からの離脱を表明。バイデン政権下で「脱炭素」を名目にした産業を化石燃料資本優先に転換させ、山火事やハリケーン対策の費用を削減しようとしている。気候変動をめぐって世界は分裂し、アルゼンチンの首相など、次々にトランプに追従しようという動きが見られている。(日本は世界最大の汚染国の一つであると弾劾されている。日本は、第7次エネルギー基本計画に「原発活用」を書き込み、原発推進・核武装化と独自のエネルギー確保へ突進)
開催国はイスラエルと結託
そもそも開催国・アゼルバイジャンは、COPを成功させ、ロシアからガスを供給できなくなった欧州の国々に、売り込もうと計画している。トルコへ抜けるパイプラインで、イスラエルに大量の石油を供給している(その見返りとして、アルメニアとの戦争のため、イスラエル製の兵器を購入)。つまり、アゼルバイジャンは、パレスチナ人民のジェノサイドに深々と加担している国なのだ。
強権的な独裁国家であるアゼルバイジャンでは、気候変動活動家たちの勇気ある闘いが展開された。コロナ以降、分岐する気候変動運動だが、左翼的な潮流がパレスチナ連帯を掲げ、反イスラエル・反アゼルバイジャンの全世界一斉行動が150カ所で闘われた。パレスチナ人民の抵抗と気候変動の闘いが一つになって急進化しているのだ。
気候災害深刻化に怒り拡大
気候危機はより深刻化している。この秋にも、異常気象が連続的に発生している。アメリカでは、9、10月にハリケーン・ヘレン、ハリケーンミルトンが襲来。イギリスでは、ハリケーン・バードがウェールズを襲い、大洪水をもたらした。老朽化したインフラが被害を拡大させ帝国主義国でも気候災害が深刻化しつつある。
とりわけ巨大な被害をもたらしたのは、スペイン・バレンシアの大洪水だ。1年分の雨が1日で降り、70人が死亡、200人以上が行方不明となった。この時の政府は、大雨への注意喚起や学校や営業所の閉鎖などの災害対応を怠ったことも重なり被害が拡大した。国王夫妻と首相が現地訪問した際には、怒った人民が石やシャベルを投げつけ、公用車をたたき壊した。11月9日には、保守派の州首相の退陣を要求する13万人のデモがおこなわれた。欧州では、気候危機をめぐる対応が、反政府運動となって巨大行動に発展しつつある。
帝国主義者、各国の権力者、資本家階級は気候危機、環境破壊問題への取り組みを声高に叫びながら解決する力も意思もない。帝国主義を打倒し、資本主義に終止符を打つことによってしか人間の未来はないのだ。
(是永真琴)