明日も耕す 農業問題の今 鳥インフルエンザ再襲来 工場型生産に終止符を

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週刊『三里塚』02頁(1148号02面05)(2024/11/25)


明日も耕す 農業問題の今
 鳥インフルエンザ再襲来
 工場型生産に終止符を

(写真 殺処分に向かう鹿児島県職員ら【11月20日】)

 卵の価格高騰が心配されている。猛暑による夏バテで鶏の産卵数が減っているうえに、鳥インフルエンザが過去最悪のペースで急拡大しているからだ。一昨年の「エッグショック」が再来するかもしれない。
 今シーズンの鳥インフルエンザは10月17日に北海道で確認され、2例目が私たちの地元千葉県香取市。以降、10月18日までに6道県8事例で確認されている。殺処分は約108万羽にのぼる。
 農場での発生はこれまでで最も早く、過去最多の発生となった2022年度シーズンに匹敵するペースだ。
 全羽殺処分を回避するために農水省が推進したのが「分割管理」だ。大規模農場を複数の鶏舎群に分け、作業する人員や車両、機材を別個に備え「別農場」とすることで、処分対象を減らす。
 また、農水省は10月26日、防疫指針の改正案をまとめ、農場で発生した際の防疫措置は農場に「第一義的責任」があると明記した。
 これらは現場に大きな負担を強いながら抜本的対策にはなっていない。

過密ゲージ飼い

 100年前まで強毒の鳥インフルエンザは発生しなかった。H5N1鳥インフルエンザは、自然からかけ離れた現在の工場型畜産に根本的な原因がある。ここから離れない限り真の解決はない。
 欧米では、アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から、日本で「平飼い」と呼ばれる放し飼いの飼育方法が注目されており、ケージ飼いを禁止する動きも顕著だ。
 ケージ飼いだと過密空間になってしまうため、感染が発生した際に一気に蔓延(まんえん)するリスクがあるが、平飼いなら感染が起こっても、そこまでの事態には至らない。
 しかし、放し飼いは広い土地が必要になるので、ケージで飼育するよりも大量生産が難しくなり、結果として卵の価格にコストが転嫁される。そのため、一般に平飼い卵の価格は高い。
 日本では、こだわっている小規模養鶏農家をのぞけば、数十万羽から百万羽単位で飼育している大手が、そのうちの数%程度を試験的にエイビアリー(立体型平飼い鶏舎)に切り替えている程度、というのが現実だ。

資本主義の限界

 政府の対応はどうか。
 農林水産省は日本におけるアニマルウェルフェアの指針として2023年7月、「畜種ごとの飼養管理等に関する技術的な指針」を公表した。
 しかしこれは努力目標程度のことで、畜産物の輸出拡大を狙った基準づくりにすぎない。
 アニマルウェルフェアを広げるために「安い卵を買い求めている消費者の理解を」というなら、それは低賃金の問題だ。「コストがかかる」ならこれをサポートすべき政府の課題だ。それを中国侵略戦争に向かう石破政権に望むべくもない。
 つまるところ資本主義・新自由主義の限界なのだ。問題の解決は、日帝を打倒し、資本主義を終わらせるしかない。
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