成田空港需要回復せず 羽田に国際旅客を奪われ貨物化推進も破産は必至

週刊『三里塚』02頁(1148号02面04)(2024/11/25)


成田空港需要回復せず
 羽田に国際旅客を奪われ貨物化推進も破産は必至

(写真 田村社長会見【28日】)

 10月28日、NAAの田村明比古社長は定例会見で、成田空港の24年冬スケジュール計画を発表した。1日平均の発着数は、前年比では増えているもののコロナ前の19年同期比では7%減の656回で、今もってコロナの需要消滅から回復できていないことが明らかになった。国際線は5%減の533回で、国内線は12%減の123回だ。
 田村社長は、「これは通常とは異なる参考値だ」と言い張り、「U/Lルール免除、ウクライナ情勢の影響」などを理由に挙げ、平常時に戻れば、需要は回復するような見通しを発言した。
 U/Lルールとは、国際航空運送協会(IATA)が定める国際的な発着枠調整ルールに基づくもの。混雑空港における発着枠の有効活用のため、航空会社に配分された発着枠の使用率が80%を切る場合、翌年の同時期同時間帯の発着枠の優先配分権利を得られなくなる。航空会社の不可抗力の事由により欠航し、発着枠が使用されなかった場合、使用率の算定から除外する。
 田村の言い草は、航空会社に責任を押し付けているだけだ。
 ウクライナ戦争については、何を指すのか不明だが、ロシア上空の飛行ルートの変更など航空機の運航に影響はあっても、成田便を増減させるようなものは軽微であり、理由にならない。

成田だけが没落

 成田の需要が回復できない理由は、中国便の減少と、首都圏での国際便を羽田に取られていることが最大だ。これは、国交省が公表した「2024年冬期スケジュール(10月27日〜25年3月29日)国際線定期便の概要」から読み取ることができる。
 概要では、運航便数全体をコロナ前の101%(旅客便99%、貨物便119%)まで回復するとし、方面別旅客数と利用空港別を発表した。
 方面別・空港別の主な動向(旅客便)は、 韓国、カナダ、中東、豪州、米国本土などの路線で、「コロナ前より大きく便数が増加する」ものの、ハワイ・グアム、欧州、中国などの路線は「回復途上」(コロナ前比で、ハワイ・グアムマイナス35%、欧州マイナス32%、中国マイナス24%)。このように、国際便利用者は、韓国などで増大するが、円高などを理由に日本人の海外旅行の減少は大きい。
 空港別では、主要空港(成田、羽田、関西、中部、福岡)について、「羽田・福岡は、コロナ前を上回る便数が就航(コロナ前比で、羽田・福岡ともに+32%)」「コロナ前と比べて、成田は89%、関西は96%まで回復」と分析。
 地方空港(上記5空港以外の国際線定期便が就航している空港)は、コロナ前の99%まで回復するとしている。
 一見して明らかなのは「89%」という成田の回復の遅れである。データを見れば明白だが、成田の減少分は羽田に移っているのだ。「羽田の国際化による成田の没落」が、はっきりした。

軍事空港化の道

 問題は、今もってNAAや国が「成田発着回数50万回化」を掲げ、空港機能強化を推し進めていることだ。その根拠は、得手勝手な航空需要予測だ。「50万回」の実現可能性は皆無だ。NAAは、コロナの影響での需要予測の軌道修正を図っているが小手先だ。成田空港の貨物空港化に舵を切り替え、C滑走路建設と空港拡張(貨物基地建設)に突き進んでいる。しかし、航空貨物の大部分が旅客機の空きスペースで運ばれるように、貨物空港など単独で存続できるものではなく破産が必至である。結局は、反対同盟が指摘しているように膨大な貨物領域は、軍事物資の輸送・備蓄に位置づけられ、軍事基地として利用されるのだ。成田軍事空港粉砕を。
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