明日も耕す 農業問題の今 「放射線育種」は危険だ 安全性実証なく品種転換
週刊『三里塚』02頁(1147号02面05)(2024/11/11)
明日も耕す 農業問題の今
「放射線育種」は危険だ
安全性実証なく品種転換
新米が出回りはじめたにもかかわらず、米の高値は収まらず「令和の米騒動」が続いている。主食としての米が注目を集める陰で、多くの人が知らないうちに、重大な品種の切り替えが進もうとしている。
秋田県は、従来品種に代えて来年から放射線育種米「コシヒカリ環1号(以下、環1号)」と「あきたこまち」を掛け合わせた「あきたこまちR」に作付けを全面転換する。
放射線育種とは、種子に放射線を照射して遺伝子を破壊し、人工的に突然変異を起こして新品種を作る技術だ。
農林水産省は2018年、重イオンビーム照射によって遺伝子を改変させた環1号とその「後代交配種」を日本の主要な品種にする指針を発表し、その導入を各都道府県に働きかけている。秋田県はそのさきがけだ。
重イオンビーム放射線育種では、遺伝子の二重鎖が一挙に直接切断される。その結果、未知のタンパク質ができたり、他の遺伝子に影響を与える可能性を否定できない。その安全性を実証する研究など行われていない。
だが、秋田県は「あきたこまち」と「あきたこまちR」に品質の差はないとして、2つとも「産地品種銘柄」〈あきたこまち〉と呼ぶという。
農家に負担強制
環1号の開発はカドミウム対策とされている。かつての鉱山の乱開発、とりわけ戦争による銅のやみくもな採掘で、日本では限られているが、カドミウム汚染地域が存在する。
あきたこまちRも、カドミウムの吸収にかかわる遺伝子が破壊され、カドミウムがお米にほとんど吸収されないという。
だが、同時に人にとっても稲にとっても必須なマンガンの吸収も阻害してしまう。
その結果、マンガン含有資材や病気予防のための農薬(殺菌剤)の使用に迫られ、経費や手間がふえて、環境や健康への影響も懸念される。
また、「あきたこまちR」は品種登録されているうえに祖先の「コシヒカリ環1号」の特許がついてまわり、2重の許諾料が種もみ価格に載せられる。
販路拡大狙い?
カドミウム汚染対策だというなら、その責任は国策として鉱山開発を進めた国、そして企業が負うべきだ。何より汚染そのものをなくしていくことが第一だ。実際、「湛水管理」といった対策や検査で、カドミウムが基準値を超える米は市場には一切出ていない。対策が必要な地域も限られる。
それなのに、農林水産省はカドミウム低吸収米を、2030年までに5割の都道府県で導入することを目標に進めようとしている。
なぜなのか。カドミウムの残留基準が厳しい海外への販路拡大がねらいとも言われるが、明確な説明はなされていない。
マスメディアで取り上げられることなく事態は進んでいる。新たな種の支配・強制を許すな!