日米軍事演習キーンソード25 「離島奪還」想定し空前の大訓練 空港・港湾の軍事利用拡大許すな

週刊『三里塚』02頁(1147号02面04)(2024/11/11)


日米軍事演習キーンソード25
 「離島奪還」想定し空前の大訓練
 空港・港湾の軍事利用拡大許すな

(写真 徳之島の手々浜海浜公園に着陸する陸自のオスプレイ【23日】)

(写真 米太平洋艦隊司令官と自衛隊の吉田統合幕僚長が共同記者会見)


 10・27総選挙―11・5米大統領選で米日帝国主義の政治的・体制的危機はますます激化し、「2027年開戦」を前提に中国侵略戦争への突進が加速している。米海軍制服組トップのフランケティ作戦部長は、米海軍の戦略指針となる文書「航海計画2024」で、「2027年までに中国と戦争になる可能性に備えて(米軍の)能力強化を図る」と打ち出した。
 10月23日〜11月1日に行われた日米共同統合大演習「キーン・ソード25」は、過去最大規模だ。自衛隊が約3万3千人、艦艇約30隻、航空機約250機が参加。米軍は在日米軍だけでなく、インド太平洋軍も含めて約1万2千人が参加し、艦艇約10隻、航空機約120機が展開した。
指揮・統制の連携強化図り
 キーン・ソード25は、今年2月に初めて中国を仮想敵国とした図上演習「キーン・エッジ24」をベースにした実動演習だ。陸海空での戦闘訓練、シーレーン(海上交通路)確保、重要施設などの防護、補給などの後方支援などを実際に行い、日米部隊の連携を練り上げていく。石垣島には米海兵隊の高機動ロケット砲システム「ハイマース」を初めて展開、日米共同で対艦戦闘訓練するという激しさだ。
 キーン・ソード25の課題は、日米安保の強化とりわけ日米両軍の指揮・統制連携の実戦的構築である。日米は、南西諸島を戦場とするため平時から即応態勢を作り上げようとしている。そのため日米両軍は、計画立案から運用まで一貫化させ、今回も自衛隊が24年度末に設置する「統合作戦司令部」を前提で演習に臨んだとされる。
中国侵略戦争を担う総稽古
 またキーン・ソード25は、直前の陸上自衛隊演習と一体の演習であった。陸自演習は、全15師旅団(10万人)を動員した過去最大規模の訓練を9月2日から開始しており、その一部をキーン・ソードへ合流させた。併せて13万人を動員するもので、日帝自身が中国侵略戦争を主体的に担うための総稽古と言える。
 10月10日には奄美大島の名瀬港に北海道全域を担当する北部方面隊の部隊が民間船を借りて入港。22日までは陸自のみで訓練し、23日以降はキーン・ソード25に参加した。すでに陸自は沖縄県の第15旅団以外の全師団・旅団を「機動師団・旅団」に改編することを決定し、「有事」には全軍が南西諸島に集中する体制だ。日本版海兵隊といわれる水陸機動部隊は、その最先鋒だ。
 実戦訓練として強化されたのは、「生地(せいち)訓練」の拡大である。奄美大島と徳之島を中心に、自衛隊の施設や演習場ではない山間部や海岸、畑、公園などを使用した訓練を行った。生地訓練は、日本では対馬など一部の場所以外ではできなかったが、今回で広く踏み込んだ。これは島しょ防衛・米軍作戦EABO(遠征前進基地作戦)の一環であり、離島奪還を想定して空挺(くうてい)部隊の降下や、海上からの上陸演習だ。
 さらに、住民避難や戦病人の輸送を実施。沖縄県与那国島では陸自・米軍の輸送機「オスプレイ」を用いた島外へ避難訓練を強行。陸自のオスプレイが本島や与那国島に飛来するのは初だ。また、負傷兵の移送では、沖縄県石垣島などから那覇市にある医療拠点に移し、より高度な治療には埼玉県入間市にある自衛隊病院に送る。医療面でも実戦に備える。これらの機動力の確保が戦闘の成否を決するからだ。
反対運動強化し戦争阻止を
 しかし、このオスプレイは、23日の鹿屋航空基地への緊急着陸、27日の与那国での演習中の事故で、使用が中断された。
 今回の演習で全国12カ所の民間空港と20カ所の港が使用された。政府は国家安保戦略に沿い公共施設を自衛隊や米軍が普段から訓練などで利用できる特定公共インフラ利用計画を策定し、全国28カ所の「特定利用空港・港湾」を指定。それをテコに地元自治体・住民の反対があろうとも、自衛隊・米軍の軍事使用を一気に既成事実化しようと演習のたびに利用施設を拡大している。しかし航空自衛隊の輸送機で米軍車両などが持ち込まれた新石垣空港(沖縄県石垣市)、民間のチャーター船で輸送された自衛隊車両が陸揚げされた中城湾港(うるま市)では、労働者住民の反対闘争がたたきつけられ、演習に使用された本土各地の港湾・空港施設でも抗議行動が闘われている。
 労働者への戦争動員と公共インフラの軍事利用阻止の闘いを強め、中国侵略戦争を阻止しよう。

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