成田夜間飛行差止民事訴訟 これ以上被害広げるな 周辺住民が騒音の実情訴え
成田夜間飛行差止民事訴訟
これ以上被害広げるな
周辺住民が騒音の実情訴え
成田空港騒音被害訴訟団による民事訴訟第3回口頭弁論が10月30日、千葉地裁民事第1部(小林康彦裁判長)で開かれました。この裁判は、成田空港の周辺住民(成田市、芝山町、横芝光町、茨城県稲敷市)が国に対し、午後9時から午前7時の飛行差し止めを求めた行政訴訟と一対の裁判です。
この日は冒頭、弁護団が109㌻に及ぶ原告準備書面(1)の要旨を陳述しました。騒音被害にかかる差し止めの基準、騒音の実態、被害の実態、飛行差し止めを認めた厚木基地第4次訴訟について、防音対策では防音工事の前後の音の変化を調べていないなど調査がずさんであること、弁護団自らも泊まり込んで調査した原告が生活する夜の静かさについて、成田空港は他空港とは異なり独自の内在的制約があることなどについて、簡潔に述べられました。
続いて、1983年からA滑走路の南側で暮らす住民が意見陳述に立ちました。
朝6時に起きたとたんに飛行機の騒音が始まる。日中は外で過ごすことがほとんどで、農作業、洗濯物を干したり、買い物など、ふいに襲ってくる音は本当にストレスになる。会話もできない。飛行機が飛び終わる24時頃でないと寝付けず、慢性的な睡眠不足であること。バードストライクを減らすための空砲、深夜の滑走路整備、エンジンテスト、一日中、空港関連の騒音が鳴り響く中で暮らしている。飛行差し止めは譲歩した訴えであることを強調しました。
さらに、「たとえ裁判で勝って10時間飛行機が止まっても、残り14時間騒音にさらされるということ自体が我慢できない」と、原告に誘った住民から言われたこと、家族で住む住民から「子どもが宿題をしたり、学校であったことを話をしたりする夕方の時間も止めてほしい」と訴えられたことを語り、「人が住む内陸に空港を造ると決めたのは国とNAAだ。この地に住む住民の健康を守る責任は当然ある。生活をする上で大きな要求ではなく、生きていくためのギリギリの訴えであることをわかっていただきたい」と切々と訴えました。
最後に「裁判を始めてからすでに5人の住民が亡くなっている」と述べ、直前まで元気だった人まで亡くなるなど今まで以上に不安を感じ衝撃を受けている原告を代表して、「これ以上、亡くなる方を出したくない。被害が広がるのを待つことなく、飛行差し止めの判決が出ることを願っています」と締めくくり、法廷に大きな拍手が鳴り響きました。
小林裁判長は、次々回以降の予定を進行協議で決めるとして、閉廷を宣言しました。
千葉県弁護士会館で裁判報告会が行われました。海渡雄一弁護団長は「住民の意見陳述を続けることが勝利の道。引き続き住民の訴えを裁判所に突きつけよう」と呼びかけました。訴訟原告団長は「騒音はどこまでなら許されるのかなどという受忍限度論などそもそも認められない。飛行機を飛ばさなければ騒音はゼロ。それを求めている」と力説されました。
次回期日は、1月15日(水)11時から。横芝光町の住民が意見陳述の予定です。飛行差し止め行政訴訟は11月15日(金)11時から千葉地裁で行われます。
(土屋栄作)