空港より農地が大切 団結街道裁判 市東さんが確信固く陳述 道路廃止処分の違法を徹底追及
空港より農地が大切
団結街道裁判
市東さんが確信固く陳述
道路廃止処分の違法を徹底追及
衆議院総選挙(10月27日投開票)で自民・公明の与党が大敗した。戦後3番目の低投票率に示されるように野党への希望・期待も存在しない。東京・日比谷野音を埋める3000人の結集で勝ちとられた11・3全国労働者総決起集会・銀座デモは、「戦争を止め、社会を変える力がここにある」ことを全社会に力強く示した。労働組合と並ぶ「反戦の砦」として中国侵略戦争阻止の最先頭で闘う三里塚芝山連合空港反対同盟は12月現地闘争をかまえている。ともに農地死守・成田軍事空港粉砕を闘おう。千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で10月25日、団結街道裁判が開かれ、反対同盟・市東孝雄さんの本人尋問が行われた。
営農で日々往復した道だ
市東さんの営農にとって必要不可欠の道路であった団結街道(成田市道・天神峰―十余三線)は、成田空港会社(NAA)の「3本目の誘導路をつくるのにじゃまだ」との意思を受けた成田市によって、2010年6月に暴力的に封鎖され、その土地は格安でNAAに売り渡された。団結街道裁判はこの廃道処分の違法を追及する裁判だ。
開廷に先立ち、反対同盟と支援連は千葉地裁前で情宣活動に立ち「耕作権裁判で農地強奪の不当判決を絶対に許さない」と訴えた。
傍聴席を反対同盟と支援が埋め開廷。反対同盟顧問弁護団による主尋問に答えて、市東さんが陳述した。
団結街道は江戸時代から地域の住民によって使用されてきた道であり、NAAが「廃止が前提の道路」などと言う資格などない。
市東さんは、「南台農地と自宅を車で1分で結ぶこの道を毎日数往復し、営農で使わない日はなかった。自分だけでなく、郵便の車も使っていた」と述べた。
2010年2月に成田市長から市東さんに「新たな誘導路整備に伴い、市道を廃道とする必要が生じた。3月議会に付議する予定」との一方的通告が届いた。
市東さんも傍聴した2月の成田市定例議会は、初めから廃道ありきで最大の当事者である市東さんの営農・生活への影響は考慮の範囲外。足立満智子議員が、「誘導路との交差部分をトンネル化することは検討したか」と問いただしたが、市の土木部長は答えなかった。
市東さんが機能補償道路について知ったのは、5月頃に団結街道の通行禁止予告看板が出された時だった。この裁判で小泉成田市長が「機能補償道路ができれば市東さんの不利益は解消すると思った」と証言したことについて、市東さんは「市長は何も考えていない」と怒りを表した。
廃道を取り消し元に戻せ
同年の5月17日に、NAAは市東さんの自宅前に団結街道の閉鎖を予告する看板を設置。これに強く抗議した市東さんは「器物損壊」で千葉県警に不当逮捕され、農作業が忙しい時に23日間も勾留された。そして6月28日に、夜陰に乗じて街道の封鎖が強行され、南台農地の周囲は高いフェンスで囲まれた。自宅から南台耕作地まで直線で500㍍、トラクターで2分、軽トラで1分で行けた距離だったのが、大きく迂回して交通量の多い道路を進み、1800㍍もの道のりを通らなければならなくなり、時間は4倍かかるようになった。「14年間分の時間のロスは1日1時間として5000時間」と市東さんは述べた。
また、17年には市東さん宅に援農に入っていた支援者が、団結街道が封鎖されなければ通ることのなかったトンネル内で追突事故に遭い重傷を負った。このように危険な迂回路を日々強いられているのだ。
13年の第3誘導路の完成で騒音もひどくなった。朝6時から深夜まで続く騒音で、寝付けないこともたびたびだ。
市東さんは、「封鎖されたことを知らずに車で入ってきた人から『なんで勝手に道を閉じたんだ!』と文句を言われたこともある」と悔しさをにじませた。
最後に市東さんは裁判長に向けて力強く訴えた。「NAAは、空港機能強化によって年間の発着を50万回に増やすなどと右肩上がりの予測を言っているが、そんなものが必要か。空港よりも農地の方が大切だと私は確信している。農民にとって農地は命。土地がある限り、農業をやり続けるという私の気持ちは変わらない。裁判所に対しては、廃道処分を取り消して元に戻せと言いたい。空港一辺倒のやり方をやめ、公正な判断を下すべきだ」。市東さんの揺るぎない姿勢に、傍聴席から拍手がわいた。
12月現地闘争に集まろう
反対尋問に立った成田市の代理人・杉本は、「迂回ルートは1800㍍ではなく、1200㍍ではないのか」と被害を小さく描こうとあがいた。さらに、NAA代理人の長屋文裕は市東さんに、「3月の耕作権裁判で『今何も困ったことはありません』とおっしゃいましたよね」といやらしい表情を浮かべて市東さんに問うた。日々空港によるひどい不利益、営農妨害、追い出し攻撃を全力で打ち返して営農を成り立たせる努力をしているか、今まで市東さんの説明を聞いておきながら加害当事者が「何も困っていないと言っただろう」と言い放ったのだ。法廷は怒りに包まれた。
裁判長は次回期日を来年1月24日とし、次々回の2月28日を最終準備書面の提出、弁論終結とすることを告げ閉廷した。
伊藤信晴さんの司会で報告集会が行われた。最初に市東さんが、「これからもがんばります」と簡潔にあいさつした。さらに弁護団が廃道処分の違法性をとことん追及する決意を表明した。
動労千葉の山田護さん、市東さんの農地取り上げに反対する会、全学連が連帯発言に立った。全学連は、「人生をかけた反対同盟とここにいる皆さんの闘いに応え、成田軍事拠点化を許さず空港を破壊するまで闘う」と決意を語った。
伊藤さんが12月に現地闘争を行うことを確認し、耕作権裁判とともに結審が迫るこの団結街道裁判に勝利する決意を全員でうち固めた。