明日も耕す 農業問題の今 食料自給率3年連続38% 目標を投げ出す農水省
週刊『三里塚』02頁(1143号02面04)(2024/09/09)
明日も耕す 農業問題の今
食料自給率3年連続38%
目標を投げ出す農水省
農水省は8月8日、2023年度の食料自給率を公表した。前年同様カロリーベースで38%。10年度以降、14年連続で40%を下回った。農水省は、来春改定する食料・農業・農村基本計画で新たな指標を設けるという。
1965年度にはカロリーベースで73%あった自給率は、食料・農業・農村基本法制定時の99年度には40%まで落ち込んだ。同法では自給率目標を「向上を図ることを旨」に定めると明記。2000年に初めて設定した目標では、10年度までに45%に高めるとしたが、その後も低下し、20年度に過去最低の37%となった。政府目標は一度も達成できていない。
坂本哲志農水相は国会答弁で「自給率が確実に上がると言い切ることは困難」「政策的な実現可能性も考慮して目標を定めるべきだ」との考えを示した。
政府自ら設定した目標が達成できないからといって、目標に問題があるというのはあまりにもデタラメだ。
「消費の変化で」
その新たな目標として、農水省は来春改定の食料・農業・農村基本計画で、食料自給率とは別に、自給率を変動させる要因を分解して政策を評価する指標(KPI=重要業績評価指標)を設ける。食料自給率は、国内生産の増減よりも、米や水産物の消費減少など国内消費の変化の方が大きく影響しているという。
農水省の説明によると
①自給率の高い米の消費が減少し、自給率の低い畜産物や油脂類の消費が増加したことが自給率を下げる結果となった。
②以前は品目自給率が100%を超えていた魚介類が現在は60%前後。③畜産物は輸入飼料に依存した生産なので実質的な自給率は15%程度。食肉は1980年後半からは輸入が増えて品目自給率が低下し続けている——となっている。
自給率の低い畜産物などは、クルマを売るために海外から安く農産物を輸入する政策を続けた結果ではないか。消費の変化をあげて、消費行動に問題があるかのような言い回しは論理のすり替えだ。
新指標は有効か
また、新指標は「生産資材の確保など自給率では評価できない課題も多角的に評価する」という。これに対して、東京大学大学院教授の鈴木宣弘さんは「食料自給率は生産要素・資材と一体的な指標である」と指摘する。生産要素・資材がなければ食料生産ができず、自給率はゼロになる。実際、飼料の自給率が勘案されて38%という自給率が計算されている。
生産資材の確保は自給率に集約される構成要素で、別の指標として重要というものではない。
新たな指標は、自給率の要因を切り刻んでことさらに取り上げ、都合の良い数字を強調してスマート農業などを推進し、農民つぶしを隠蔽(いんぺい)するものだ。
自給率の後景化、棚上げを許してはならない。