横芝講演会 「夜間飛行禁止に」 騒音の健康への影響を解説

週刊『三里塚』02頁(1142号02面03)(2024/08/26)


横芝講演会
 「夜間飛行禁止に」
 騒音の健康への影響を解説

(写真 町民会館で講演【8月17日】)

 「航空機騒音から健康を守る講演会」が横芝光町で8月17日、実行委員会の主催で開かれました。
 講師は、北海道大学大学院工学研究院・地域環境研究室助教の田鎖(たぐさり)順太さん。騒音と健康被害問題での専門家です。
 田鎖さんはまず、成田空港の機能強化策(第3滑走路新設、B滑走路延伸、運用時間延長)の概要を明らかにした上で、成田を「夜間も発着を行う内陸型空港」と特徴づけ、機能強化後は発着回数が現状の倍の1200回に、夜間発着は150回と実に4倍近く増え、運用時間は午前5時〜深夜0時30分に拡張される(飛ばない時間はわずか4時間半)ことを明らかにしました。
 そして騒音に対する感覚的な不快の度合いは個々人で違っていても、人の眠りを妨げる夜間騒音は決定的に重視されるべきことを強調し、健康に与える影響を解き明かしました。
 不眠症や疲労感が重なって「睡眠妨害が繰り返される場合には、睡眠障害と診断されうる」として、虚血性心疾患、脳卒中などの深刻な病気が引き起こされる危険性を指摘しました。WHO(世界保健機関)や同欧州事務局が夜間騒音を重視してガイドラインを示し勧告を行っているのに比して、日本における「航空機騒音にかかる環境基準」には夜間騒音を直接的に評価する指標がなく、見直しの必要が指摘されています。
 田鎖さんは成田空港周辺の騒音の現状を子細に検討した上で、以下のように結論付けました。「現状でも、許容できない程度の騒音曝露を住民は受けている。機能強化によって、高い騒音曝露を受ける住民は3倍になる。平均55デシベルという高い騒音曝露を受ける住民に限っても、約600人から2200人に増える。夜間の飛行禁止をするしかない」。そして地域の将来のために議論を続けることを訴えて、70分を超す講演を締めくくりました。
 質疑応答の時間になると、参加者が次々と積極的に手を挙げ、騒音被害の実情と国・行政・空港=NAAへの憤りを表し、それらに応えて田鎖さんが最新の科学的知見を踏まえて解説を加えました。「夜だけはどうか飛ばさないでほしい。眠れない。夜だけは!」と繰り返し訴える女性もおり、積もりに積もった住民の怒りの大きさを感じさせました。
 最後に「成田空港の航空機騒音から健康を守るため健康被害影響調査の実施を求める決議」が、参加者全員の大きな拍手で承認されました。
 「新しい成田」キャンペーンとは裏腹に、空港は反人民的本性を一層さらしつつあります。
(田宮龍一)
このエントリーをはてなブックマークに追加