夜間飛行差止訴訟 住民が騒音被害訴え 「子どもを寝かせられず」
週刊『三里塚』02頁(1142号02面02)(2024/08/26)
夜間飛行差止訴訟
住民が騒音被害訴え
「子どもを寝かせられず」
(写真 裁判報告集会【7月31日】)
成田空港騒音民事訴訟の第2回口頭弁論が7月31日、千葉地裁民事第1部(小林康彦裁判長)において開かれた。この裁判は、成田空港の周辺住民が国に対し夜間飛行の禁止を求めた行政訴訟と一対のものである。
冒頭、成田空港会社(NAA)から書面提出等の手続きが行われ、住民側は求釈明で騒音データ等の釈明を要求した。
この日のハイライトは、芝山町住民の女性Aさんの意見陳述。Aさんは、A滑走路とB滑走路に挟まれた地区の住民である。途中涙ぐみながら、騒音による子育てと現在の自身の耳などの障害の大変さを語った。陳述書には、子育て当時の写真が添付してあり、子育ての様子がうかがい知れた。Aさんは、次のように訴えた。「子どもを寝かせようとしても、飛行機の飛んでくる音で子どもが起きてしまい、私も睡眠不足になりイライラして授乳ができなくなりました」「騒音のせいで、姑とも折り合いがうまくいかなくなり、別の地区にアパートを借り住みました。経済的に大変でした」
そして、子どもへの騒音被害の様子を陳述した。「長男が学校で居眠りをして、私は叱ろうとしたのですが、当時の先生も騒音で寝れないことをわかってくれて、保健室で寝かせてくれていた。近所の子も眠たそうにしていたそうで、騒音地区全体の問題として先生にも認識されていたようでした」
騒音公害の影響の深刻さに法廷は圧倒された。
閉廷後、報告集会が千葉県弁護士会館で行われた。これまで司会を務めていた成田市の原告Bさんが7月に亡くなり、急きょ横芝町の原告の方が引き受けた。訴訟団長の加藤茂さんは、亡くなった成田のBさんを追悼し、「今でも彼の死を受け入れられない。彼は、30年間、空港周辺の残土や環境問題を共に闘った。家族が個人の思いを引き継いでくれる」と語った。
海渡雄一弁護団長があいさつし、弁護団から報告が行われ、陳述したAさんとその息子が発言した。質疑応答では、「騒音被害を争っているが、空港拡張に対する異議を主張の中で展開したほうが良いのでは」との意見が出され、活発な論議となった。
また、8・17騒音問題横芝講演会の参加の呼びかけが行われた。横芝の原告から、「ビラは新聞折り込みで、自分たちで宣伝カーを回す。14日が決まっていないので誰か」と募ると、Aさんの息子が名乗りをあげた。
この日の裁判は、Aさんの家族も来て、報告集会でも注目の的であった。「Aさんの陳述が素晴らしかった」との、加藤訴訟団長や弁護士の賞賛のとおりの弁論であった。今後も輪番で原告の陳述を行い、騒音被害の実態を訴えることが確認された。次回は、10月30日午後3時開廷。(行政訴訟は8月27日、午後2時半)
(大戸剛)