全国農民会議共同代表 小川浩さんの訴え 農民は戦争に反対し闘う
全国農民会議共同代表 小川浩さんの訴え
農民は戦争に反対し闘う
全国農民会議共同代表で千葉県匝瑳市のコメ農家・小川浩さんが7・7農楽まつりで、食料・農業・農村基本法改悪を「農民の戦争動員だ」と徹底批判しました。以下、発言を紹介します。(文責・編集委)
先ほど来、農業基本法改悪について話がありました。農地解放で自作になった農民が力を入れて農業をがんばり、山の上までみかんを植えたり、牛を飼ったり、やっと一人前になって農家で食っていける見通しがついた中、オレンジ・牛肉をどんどん輸入して、日本の農家をつぶしていきました。それが1961年の農業基本法でした。
基本法のもとで農家つぶし
1999年に食料・農業基本法となり、さらに25年経て今回改定と。議論の中で農民として気になったのが、「農民政策として十分である。これ以上農民保護をする必要ない」という前提で今回の農業基本法の改悪が行われたことです。
今の基本法になって農民はどうなったのか。最近では、「バター、牛乳が足りないから牛を増やせ」と言い、今度は余ったから「殺せ」と言う。
コメの値段は東京では一俵2万5千円。昨年の秋には1万4千円。1万円以上値が上がっています。だけど農家はコメを持っていない。業者がほとんど持っているんですね。
なんでこういう事態が起きたのでしょうか。かつて八郎潟でもどこでも減反に反対して、自分でコメを作って売ってたんですね。ところが、コメがどんどん安くなり、家畜が食べるエサ米の方が補助金がつくので金になると、八郎潟でもまとまって方向転換。全国的にもコメが安くなって、大変だということでエサ米などが増え、主食米がどんどん減った。そうした中、去年は暑さで収量と品質が落ちた。6月には在庫がなくなり、値段が上がってきている。しかし、政府は減反政策を止めようとはしません。
農家の実態はどうか。21、22年米価は最低でした。20年は、コメ農家全体の平均の年間所得が17・9万です。時給にすると181円だそうです。21、22年は、時給10円だそうです。これではだれも農家をやっていけるわけないですよね。安倍政権の時に、担い手に農地を8割集積すると言いました。そこまでではないが6割ぐらいまで集積が進んでいます。つまり、小さい農家がやめていっているわけです。
そういう中で農業基本法がそういう農家をどうするのか。助けるのじゃなくて「輸出しろ、海外投資しろ」「高額なロボット、スマート農業をやれ」「農業生産法人の農家以外の出資を拡大し、企業にどんどん参入させろ」と、つまりこれまでの家族経営はなくてもいいんだと。
今回の農業基本法は農家を根こそぎつぶしていく改悪として見なければなりません。
「食料安保」は戦争動員攻撃
その中の中心的な見方は食料安保の重視です。食料を日本の農民に任せるんじゃなくて、海外からどんどん輸入したらいいと。極端に言えば、「日本に農家が残らなくていい」と改悪された。
戦争になったら食料をどうするのか考えざるをえない中で、岸田は農家が増産の計画を出さなかったら、20万の過料を取ると。岸田政権にとっても食料は戦争をやるための死活的な問題です。そういう意味で、今回の農基法の改悪は、国民の食料の供給を考えるのではなくて、戦争のために食料を確保しようとする政策である。とともに農民にとっては、農民の戦争動員。戦前であれば、土地がない農民に満蒙開拓と、農業問題の解決のために侵略戦争に動員したことが今再び行われようとしています。だからこそ戦争反対の立場で食料安保の問題を考える必要があります。
三里塚連帯が農民解放の道
ヨーロッパでは農民がトラクターで高速道路を閉鎖するなど実力闘争で政府と闘っています。なぜかというと「地球温暖化の犯人は農家だ」というからです。畜産はCO2やメタンを出す。日本でも、田んぼに水を張るとメタンガス出すから減らせと。でも、温暖化の犯人は、農家なのでしょうか。
5年で43兆円という軍事費でまかなう軍用機などはCO2を排出しないのか。国連に報告する義務があってもみんなごまかしています。
市東さん、成田の農民の闘いは日本の農民と農業の反映、縮図です。三里塚をとことん闘うこと、労働者と連帯し、沖縄、福島と共に闘うことなしに日本の農民の解放、生きる道はありません。今後も農民会議として共に闘います。
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「コメ農家時給10円」の衝撃
農水省の統計資料によれば、稲作経営農家の1戸当たり平均農業所得は、2020年が18万円だったが、21年、22年には1万円に減少した。農業収入と補助金を含む農業粗収益が21年約350万円、22年は約378万円。農業経営費は21年約349万円、22年約377万円で、差し引きの農業所得は1万円。
これを自家農業労働時間(1000時間超)でそれぞれ割ると、2年連続で時給10円になる。
同じ計算方法で、15年までは時給500円台だったが、20年に181円となり、ついに10円に。
厚生労働省の毎月勤労統計調査(22年)によれば、一般労働者の平均月収は42万9051円。時給換算で約2643円。