成田軍事空港を廃港に 萩原富夫さん証言に立つ 「廃道は農民追い出し攻撃だ」

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週刊『三里塚』02頁(1141号01面01)(2024/08/12)


成田軍事空港を廃港に
 萩原富夫さん証言に立つ
 「廃道は農民追い出し攻撃だ」

(写真 証言を終え笑顔の萩原富夫さん【7月16日】)



(写真 夜陰に乗じて封鎖された団結街道)

(写真 市東さん不当逮捕に萩原進さんが激しく抗議した【2010年5月】)

(写真 千葉県弁護士会館で裁判報告集会)


 岸田首相は7月29日、国家戦略特区(現在は成田市・千葉市のみ)を全県に拡大しろと要望した県や成田空港会社(NAA)らに対し、「国家プロジェクトとして日本最大の貿易港である成田の機能強化を加速させ国際航空物流拠点にする」と約束。来月にも早速、特区諮問会議を開こうとしている。国際航空物流拠点は即、戦争のための兵站(へいたん)拠点となる。成田拡張を許さない闘いを今こそ強めよう。千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で7月16日、団結街道裁判が開かれ、三里塚芝山連合空港反対同盟事務局の萩原富夫さんが証言に立った。
 この日は反対同盟・萩原富夫さんの原告本人尋問。萩原さんは、反対同盟顧問弁護団の質問に答えながら、成田市東峰で農家を営み、天神峰の市東孝雄さんとともに「三里塚産直の会」として年間60種もの野菜を完全無農薬有機栽培で生産し、消費者に届けていることを明らかにした。

生活侵害の数々

 そして、成田空港による地元住民無視の事例として、2001年6月の東峰神社の樹木の突然の伐採と、それに抗議した萩原進反対同盟事務局次長(富夫さんの義父、故人)の不当逮捕を挙げた。さらに地元の農家が入会地として利用していた東峰の森の伐採、B滑走路南端に位置する東峰神社の頭上すれすれで着陸するジェット機の危険など、空港が住民にもたらしてきた生活侵害について明らかにした。東峰の森を破壊して造られた東側誘導路について、「誘導路によって囲まれてしまい、畑に行くのが実に不便になった。実際東側誘導路にはめったに飛行機は通っていない。あんなものは空港にとっても必要なかったと言える」と怒りを表した。
 そしてさらに市東さんの家と畑を包囲する形で西側誘導路=第3誘導路が造られたことについて、「市東さんが現に住んでいる家を取り囲む形で、説明もなく空港施設で建設を進めた。本当に許せない気持ちだ。空港に反対する住民を追い出すために行われた攻撃だと感じる」と弾劾した。
 そして現在、第3滑走路を建設する計画が芝山町の住民を追い出しながら進められていることについても、「NAAは地元住民を自分が利益を上げる上でのじゃま者としか見ていない」と断じた。
 さらに萩原さんの批判の矛先は成田市に向けられた。成田市は常に周辺市町の先頭で空港に働きかけを行い、それに応じてNAAが機能強化策を進めるという形をとってきた。2015年の4者協議会(国土交通省、NAA、千葉県、周辺9市町)で、機能強化の具体策として第3滑走路建設、B滑走路北延伸、夜間・早朝の飛行制限の緩和が打ち出されたが、成田市こそそれを推進した張本人なのだ。
 このような巨大滑走路建設についての考えを聞かれた萩原さんは、「第3滑走路は軍事用に使うためのもの」と核心を指摘した。安保法制のもとで有事の際に自衛隊が利用できる空港・港湾として全国38カ所が指定されている。岸田政権による軍拡・改憲路線で、成田もまた軍事利用が目指されていることは間違いない。さらに、萩原さんは成田の現状を暴いた。「NAAは現在『新しい成田空港』構想の最終的なまとめを発表している。ターミナルを一つにして使いやすくなるなどと触れ回っているが、巨大滑走路は必ず戦争のために造られる。この構想を打ち出した記者会見で田村明比古NAA社長は、『成田は100%国が株主だ』と強調していた。国の要望どおり軍事使用できるように造り変えるという意味だと感じた。すでに岸田政府は中国への軍事的包囲網を強化し、中国を仮想敵国として日米合同演習を繰り返している。そのもとで成田を軍事基地にする建設計画が進行している」
 そして成田市の小泉市長が「成田空港は、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律(特定公共施設利用法)により、武力攻撃の排除のために使用できる公共施設となっている」と明言し、軍事使用にもろ手を挙げて賛同していることを厳しく断罪した。

市長証言はうそ

 続けて萩原さんは、前回の証人尋問で出廷した小泉市長が、白々しく「空港と地域との共生」を唱えていることに怒りをたたきつけた。「地域とは誰のことか! 成田市の市民でもある現地の農民の事情など一切配慮せず廃道を進めたのが小泉市長だ。市長は前回の証言で、09年7月の4者協議会において、誘導路の新設の話は出たが団結街道廃道については出なかったなどと述べていたが、絶対にありえない。また、現に耕作している農地に隣接する道路を廃止にした前例がないことについて『認識していなかった』と述べたが、うそに決まっている。卑劣な言い逃れであり、市長として失格だ! とにかく空港の容量拡大推進、最初から廃道ありきの態度がありありで許すことはできない」と語気を強めた。そして、「小泉市長は『代替道路があれば市東さんの不利益は解消される』と繰り返したが、何も理解していない。農民は自分の畑に一日何回も足を運ぶ。そのたびに交通量の多い道路を往復しなければならない。それで実際に交通事故に遭った事例もある。市東さんの生活にかかる負担や不利益について何も考慮していない。団結街道をトンネル化することだってできたはずなのに、やろうともしなかった。結局、最後は農地を取り上げて追い出すことを考えているから、まともな道路を造る必要などないと市長は考えていたのだ」とこみ上げる怒りを表した。
 被告のNAAと成田市の代理人が反対尋問に立った。団結街道廃道によって萩原さん自身の営農が被った不利益の大きさを何とか小さく描き出そうとしたが、逆に団結街道がいかに切実に利用されていたかを浮き彫りにした。

不当逮捕に怒る

 さらに弁護団が補充の質問を行った。2010年にNAAによる「道路封鎖」告知看板の設置に抗議した市東さんが不当逮捕され、さらに萩原さん自身が抗議のデモで不当逮捕された件について、萩原さんは「NAAははなから対決姿勢で住民を敵とみなしていた。不当な看板設置に市東さんが怒るのは当然だ。機動隊が飛んできて地元の住民を即座に逮捕するなど、今思い出しても激しい怒りを感じる。自分への逮捕・勾留も不当なものだ」と弾劾し、裁判長に「成田空港を特別扱いせず、住民の権利を尊重する判断を下してもらいたい」と求めた。
 2時間を超す証言を終えると、傍聴席から大きな拍手が起こった。
 千葉県弁護士会館で伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。
 最初に萩原さんがあいさつに立った。「今日は産直の出荷日で朝4時に起きて、トウモロコシの収穫など10時まで働いてそれから来ました。眠くて疲労困ぱいですが、何とか集中力を切らさずに答えられました」と笑顔で語り、傍聴へのお礼を述べた。続いて弁護団が一人ひとり発言し、この日の証言で成田の軍事空港としての核心を暴き、廃道が住民の生活破壊であったことをリアルに突き出した意義を確認した。
 次回10月25日は市東さん本人尋問。

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