明日も耕す 農業問題の今 農地を奪う半導体工場 熊本の農業地帯が変容

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週刊『三里塚』02頁(1140号02面05)(2024/07/22)


明日も耕す 農業問題の今
 農地を奪う半導体工場
 熊本の農業地帯が変容

(写真 TSMCの熊本新工場)


 食料・農業・農村基本法の改悪から「食料安保」の言葉を目にする機会が一段と増えた。だが、食料安保は農業・農民を守るものではない。現実には国策の名の下に大規模な農地が奪われている。
 2月24日、台湾積体電路製造(TSMC)は熊本県菊陽町で建設を進めてきた第1工場をスタートさせた。
 TSMCは半導体受託生産の世界最大手で、日本政府は半導体の供給維持という「経済安保」を名目に約1兆2000億円の補助金を出す。
1200㌶消失
 TSMCの工場進出は、九州全体で20兆円、熊本で10兆円の経済効果があるとされ、蒲島熊本県知事(当時)は「100年に一度のチャンス」と、もろ手をあげて歓迎。次々と企業誘致のための工場用地造成や住宅建設、道路の新設や拡張、鉄道の延伸や新駅の建設、高速道路インターチェンジの早期着工などが打ち出されている。
 しかし、周辺の土地は高騰し、農家の高齢化や後継者不足も理由に農地売却の動きが加速。熊本県内の耕地面積はTSMCの県内進出が発表された2021年からの1年間で、東京ドーム約260個分に当たる1200㌶が消失した。
 TSMCの工場周辺では、農地を売るために貸主から借りていた農地の返却を求められる「貸しはがし」が増えている。
 熊本は、産出額国内5位の農業県で菊陽町や大津町を含む菊池地域は、熊本屈指の農業地帯だ。「熊本県と連携し、農家が営農を継続できるよう遊休農地の整備など必要な支援を検討していく」。坂本哲志農水相は2月9日の記者会見で、TSMCの進出で懸念される地元農地の減少に対応する方針を強調した。
 県は遅ればせながら休耕地や耕作放棄地を代替地として紹介する市町村との連絡会議を設けた。
 だが、土地を奪われる農家のニーズに合わず、実績はゼロで農地減少に歯止めがかからない。
産業のコメ優先
 また熊本県は、2021年10月以降、菊池地域2市2町で、農地転用が約164㌶(東京ドーム32個分)に上ったことを明らかにした。
 菊陽町の農地はほとんど「市街化調整区域」のため、本来なら農地は確保されるはずだ。
 だが、熊本県では急増する建築需要に応えるため、市街化調整区域でも「他に代わる場所がない、区域内の農作業に支障を及ぼさない」といった一定の条件を満たせば建物の建築が可能となる「集落内開発制度」が設けられている。それを盾に、強引な農地の住宅地転用などが進んでいる。
 マスコミでは「熊本の農業は食料安保において重要」「経済安保と食料安保の両立を」などと語られるが、食料のコメよりも産業のコメ(半導体)を優先するのが国策であり、これからはますます軍事最優先にされる。軍事空港建設に反対し、農地を守って闘う三里塚はますます重要だ。

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