明日も耕す 農業問題の今 食料有事法「成立」に怒る 戦時体制づくり急ぐ岸田

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週刊『三里塚』02頁(1138号02面02)(2024/06/24)


明日も耕す 農業問題の今
 食料有事法「成立」に怒る
 戦時体制づくり急ぐ岸田


 食料危機の際、政府が農家に増産などを求められるようにするという「食料供給困難事態対策法(食料有事法)」が6月14日、与党と日本維新の会の賛成で参院本会議で可決・成立した。国会論議も含め、徹底弾劾する。
 食料有事法とはどんな法律か。

農家に増産強制

 米や小麦、大豆などの国民生活上特に重要な「特定食料」が大幅に不足する事態を「食料供給困難事態」と定義し、供給不足の兆候を把握した段階で、首相を長とする対策本部を設置。農家や販売者らに対し、生産や販売に関する計画の策定・提出を指示でき、従わない場合は20万円以下の罰金を科す。
 5月に成立した改悪基本法で掲げた食料安全保障への対応を具体化したものだ。
 具体的にどんな事態を想定し、どう対処するのか何も決まっていない。
 農水省は2025年中に策定する対策の「基本方針」で、有事に生産拡大を要請・指示する農業者の考え方も含めて明確にするという。
 国会での議論・採決では多くの野党が反対した。だが、その意見は岸田政権の戦争政策を補完するものでしかない。
 委員会での参考人質疑で、立憲民主党と国民民主党が推薦した東京大学の谷口信和名誉教授は、「異常気象や紛争などの予測は不可能」「普段からしっかり(自給率向上などに)力を注ぐのが大事だ」と述べた。さらに、政府による備蓄の強化や生産拡大など、平時からの備えが重要とする意見が相次いだ。
 自給率向上など普段の農政をしっかりやれというのは当然だ。だが、「予測は不可能」などと有事を彼岸に追いやる議論は岸田政権の意図を押し隠すことにしかならない。岸田政権は今まさに戦争をやろうとしているからこそ、この法律をつくるのだ。
 「食糧供給困難事態」は「予測不可能」なのではなく、中国侵略戦争を止めなければ、十分起こりうることなのだ。
 「平時からの備えが重要」などは、あのJアラートにも似て、有事に備えることが「国民的合意」であるかのような論調を振りまくものだ。

全国で「説明会」

 国会審議では「野党から集中砲火を浴びたのが罰則規定」だとされる。
 「個人を含む農業者には前科が付く罰金は重すぎる」との反対意見が相次いだというのだが、増産の強制そのものに徹底反対したわけではない。 マスコミの論評も「有事に協力を取り付けるためにも農業者の理解を得られる丁寧な説明が求められる」など、協力することを大前提にしているのだ。
 農林水産省は今後、改悪基本法と合わせて、全国11カ所で説明会を開催する。国会内は丸め込めても、全国で怒りの声が渦巻いていることを承知しているからだ。
 闘いはこれからだ。国会内の翼賛体制をぶっ飛ばし、全国から怒りの声を上げよう。
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