明日も耕す 農業問題の今 農業基本法改悪が「成立」 戦時の食料調達が狙いだ

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週刊『三里塚』02頁(1137号02面04)(2024/06/10)


明日も耕す 農業問題の今
 農業基本法改悪が「成立」
 戦時の食料調達が狙いだ


 「農政の憲法」とされる改悪食料・農業・農村基本法(以下、基本法)が5月29日強行成立した。徹底弾劾する。成立したとはいえ、基本法は何ら農民の支持を得ることなく、岸田農政への怒りは高まるばかりだ。
 基本法は「食料安全保障の確保」を基本理念に掲げ、「農業の環境負荷低減」や「生産性や付加価値の向上による農業の持続的な発展」、「地域社会の維持に向けた農村振興」も理念として打ち出している。
 では、それをどう実現するというのか。審議では、農産物の価格形成について、「協議会で検討を進める」との答弁に終始したり、食料自給率以外の新たな目標について「詳細は基本計画で詰める」との説明にとどめるなど、政府は具体的な議論を先送りした。
 また、食料自給率向上、農業所得の向上など野党の掲げた修正案は否決されながら、その中身が13項目もの付帯決議として採択されている。付帯決議にするなら、なぜもっと論議しないのか。要は成立ありきなのだ。

侵略戦争と一体

 最大の問題は「食料安全保障」が完全に前提化され、その是非は全く論議されていないことだ。
 食料安全保障はあくまでも安全保障であり、防衛・軍事と一体だ。一般的な食料の安定供給などの話ではない。
 時を同じくして中国では6月1日、食料安全保障の確保を進める「糧食安全保障法」が施行された。食料の自給強化が柱で「経済・社会の安定と国家安全を守る」と掲げており、米中戦争をにらんだものに他ならない。 基本法は中国侵略戦争のための有事法制であり、成立ありきもそのためだ。侵略戦争絶対反対の立場から改悪反対の声を上げなければならないこの時、国会内にその声は皆無だ。

農民を切り捨て

 もうひとつ国会審議で明確になったのは、農民切り捨ての基本法だということだ。
 坂本哲志農相は5月16日の委員会質疑で、農家や農地の減少について「農業の生産基盤が弱体化したとは思っていない」と答弁した。後日発言を撤回したが、これが政府の本音だ。
 農家が減ってもかまわない、農家が減ることを前提に、農業経営の規模の拡大や先端技術の活用、食品産業の発展を通じて食料の供給を図ろうというのが基本法の考えだ。でも、いざというときには、増産に協力しろというのだ。これに黙っていられるか!
 日本農業新聞が4月下旬から5月中旬に行った農政モニター調査によれば、岸田内閣を「支持する」は26・9%、「支持しない」は72・6%。昨年9月の前回調査と比べて支持率は17・6ポイントの減で岸田内閣発足以来最低となった。怒りは地に満ちている。
 戦争反対・岸田打倒の実力闘争こそが戦時体制づくりをうち破る力だ。改憲・戦争阻止!大行進の旗の下に労働者・農民は結集しよう。
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