続発する航空機事故・トラブル 空港で何が起きているのか
続発する航空機事故・トラブル
空港で何が起きているのか
羽田空港で1月2日に起きた日航機と海上保安庁機の衝突炎上事故(5人死亡)の記憶もまだ新しいというのに、全国の空港で「あわや大惨事」の事故が続発している。
あわや大衝突に
福岡空港で5月10日、羽田行き日航312便(乗客乗員176人)が駐機場を出て誘導路を走行中、停止線を越えて滑走路に出ようとした。その時、滑走路では松山行きのジェイエア3595便(同48人)が南へ向けて離陸滑走を始めていた。事態に気づいた管制官が両機に停止を指示した。ジェイエア機はすでに時速100㌔を超えていたが急ブレーキをかけ、日航機の数百㍍手前で停止。衝突事故がかろうじて回避された。
原因は、管制官による「滑走路手前で停止」という指示の復唱確認がなかったこととされる。
羽田空港で5月23日、日航機同士の主翼が接触する事故が起きた。第1ターミナル16番駐機スポットからバックで移動を始めた新千歳空港行き日航503便(乗客乗員328人)の左主翼端と、隣の17番に前進で入ろうとした新千歳行き505便(乗客乗員なし)の右主翼端が接触した。双方とも牽引車での移動中。距離がもっと近づいていたら、機体の破損事故となっていた。
日航に立ち入り
このような事故・トラブルが特に日航で相次いでいることに危機感を抱き、国土交通省は5月24日、羽田空港にある日航の事務所に臨時の監査(立ち入り調査)を行った。さらに27日、日航の鳥取三津子社長を国交省に呼び出し、平岡成哲航空局長が「日航で安全上のトラブルが5件も続いている。経営トップが率先して安全性向上に取り組め」と、厳重注意を言い渡した。鳥取社長は体をくの字に折り曲げて陳謝した。
だが「日航の5件」だけではなかった。今年発覚した国内での航空機事故を列挙しよう。
◎新千歳空港で大韓航空機(289人)とキャセイパシフィック航空機(乗客搭乗前)の機体が接触し機体が破損(1月16日)
◎福岡空港に着陸した韓国チェジュ航空の旅客機が、誘導路をはずれ立往生(1月17日)
◎大阪国際(伊丹)空港駐機場で全日空機同士の主翼が接触(2月1日)
◎伊丹空港で、離陸のため滑走路上で待機する日航機がいるのに管制官が誤って別の日航機に着陸許可を出す(2月19日)
◎新千歳空港で全日空機がオイル漏れし、滑走路閉鎖(4月24日)
一層の過重労働
なぜ、このように事故が続発するのか。
空港での労働が一層過密・過重になっているからだ。乗務員、管制官、整備士、さらに「グランドハンドリング」と呼ばれる地上業務が深刻な要員不足に陥りながら、空港の運営がつま先立って行われている。コロナ禍で多くの熟練労働者が退職していったが、「航空需要の回復」が言われても、そんな事情に合わせて都合よく復職が進むわけではない。こうした危機、苦境を労働者の長時間労働、過重労働でのりきろうして、必然的に安全が崩壊の淵にある。
とりわけグラハンの業務は多岐にわたり、カウンターでの登場手続き、手荷物預かりから、航空機の誘導、車両による牽引、手荷物積み込み等々が、朝から深夜まで延々と続く。「空港での仕事」という華やかなイメージとは裏腹に、新自由主義のもとで押しなべて賃金は低く抑えられ、生活は苦しい。
今進められようとしている成田・羽田の首都圏空港機能強化、発着回数の大幅増は、その意味でも矛盾に満ち破綻的だ。空港労働者にも今こそ呼びかけよう。
事故多発は経営者・国の責任だ。このままでは1・2羽田のような大事故・大惨事の再発は不可避だ。安全を切り捨てる空港拡張、機能強化を許すな。
第3滑走路建設を阻止し、成田の軍事空港化を粉砕しよう。