空港拡張差止裁判 新滑走路工事やめよ 「原告適格なし」の暴論に反撃

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週刊『三里塚』02頁(1137号01面02)(2024/06/10)


空港拡張差止裁判
 新滑走路工事やめよ
 「原告適格なし」の暴論に反撃

(写真 岡山忠広裁判長)



(写真 裁判報告集会【24日】)


 千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で5月24日、成田空港拡張差し止め裁判が開かれた。
 この裁判は反対同盟が国とNAAに対し、① 滑走路の2500㍍への延長、第3誘導路建設の違憲・違法性を追及し、②「空港機能強化策」を掲げた施設変更許可により現在進められている 滑走路の再度の延伸、第3滑走路建設などの空港拡張工事の差し止めを求めるものだ。
 成田空港は、66年に作られた「基本計画」を完全に無視し、その時々の都合で施設を造り続けてきた。そして今や機能強化と称して周辺住民の生活を圧迫・破壊しながら、敷地面積2倍化(全長12㌔!)へ向けた途方もない規模の拡張工事に手を付けているのだ。
 被告・国は5月17日付準備書面で、次のように主張してきた。「原告適格がある者は、機能強化によって私権制限を受ける区域内に財産権を有する者だけだ」
 そして、原告全員に対し「区域内に財産権を有していない。原告適格がない」と切り捨てる。
 その上名指しで、太郎良陽一さんについて「財産権について主張立証していない」から認められない、伊藤信晴さんについては「いかなる財産権を持っているか証明してみろ」などと迫るのだ。
 顧問弁護団が怒りに燃えて反論を行った。
 被告の主張は、住民の人格権、すなわち人間としての根源的権利性をまったく無視している。「権利」は財産=不動産に切り縮められ、空港の拡張は「公共利益の増進だ」とされる。日本社会を根底的に腐敗させている「今だけ・金だけ・自分だけ」という新自由主義的思考を航空行政に導入するものだ。厚木爆音訴訟横浜地裁判決では自衛隊機の夜間発着訓練を禁止する画期的判決が下された。憲法に保障される生命・身体の保全を除外して、「財産権だけが権利だ」などという主張は認められない!
 さらに弁護団は、被告NAAの居直りを断罪した。NAAは原告への反論として、「B延伸、C新設によって周辺住民に生命・身体等の被害が生ずるとは認められない。そのことは、機能強化について周辺自治体で実施された住民説明会での質疑の状況に左右されない」などと言い出した。
 かつて国と空港公団(現NAA)は暴力的一方的な空港建設を進めてきたことを認め、「あらゆる意味で強制的手段をとらない」と公的に誓約したが、それらすべてを投げ捨てる住民無視のとんでもない暴論だ。
 その上で弁護団は、NAAが提出した15年度、19年度の空港周辺地域の騒音データを解析して、航空機騒音が住民の健康に与える睡眠障害などの被害を指摘。さらに夜間飛行回数が増加した20〜23年の夜間騒音データを提出するよう求めた。
 裁判長は、「原告と被告、よって立つ立場は違うと思うが」などと前置きをしつつ、「20年の施設変更許可の是非を問う裁判だから、それより後の騒音データの提出を求めるのはどうなのか...」などと「疑問」を呈した。だが問題は「立場の違い」や「後か先か」ではない。騒音で人権が踏みにじられているという現実だ。違法、無法な変更許可がもたらした結果として夜間騒音が激化しているという関係性の証明に向けてデータは不可欠であり、この点を今後一層追及する姿勢を弁護団は明らかにした。
 次回期日を9月13日と確認し閉廷した。

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