団結街道
週刊『三里塚』02頁(1132号01面04)(2024/03/30)
団結街道
漫画家の鳥山明さんが亡くなった。幼年期から「アラレちゃん」に登場するうんちんぐカー(バキュームカー)のプラモデルで遊び、TV初回のコマーシャルまで鮮明に覚えている「ドラゴンボール」世代ど真ん中の私としては寂しい限りだ▼彼は何より絵が上手かった。それは写実的と言うより、3頭身など漫画的な技法を洗練させた上手さだ。小学校時代の私のクラスでは自由帳に主人公の孫悟空はじめ登場人物を模写することがとても流行った。絵的カッコよさだけでなく、仕草も含め思わず真似をしたくなるキャラクターの創出・創造こそが漫画家としての彼の突出した才能だった▼他方で、作家性のない漫画家だった。彼自身が伝えたい明確なメッセージはない。編集者に急かされ、強いられ、ただひたすらに「売れる」ことを自己目的化した漫画を書かされた空虚な存在=「虚無」こそがストーリーテラー(作家)としての彼の本質だ。亡くなった翌日、全商業紙の一面下コラムでの絶賛にもその一端が示されている▼不謹慎を承知であえて言えば、新自由主義を最も体現した(させられた)漫画家だった彼の死は、新自由主義(的漫画)の終わりを予感させる。すでに彼の限界を自覚した漫画家たちが奮闘中だ。だが、彼を真に乗り越える漫画家はいまだ現れていない。新自由主義を終わらせる作家性と大衆性あふれる新時代の漫画家の登場は階級闘争の進展にかかっている。