明日も耕す 農業問題の今 「強権化」で農地減少対策? 農用地区域での転用めぐり
週刊『三里塚』02頁(1128号02面03)(2024/01/22)
明日も耕す 農業問題の今
「強権化」で農地減少対策?
農用地区域での転用めぐり
農水省の調査によると、優良農地とされる農用地区域内の農地面積が22年で397万8000㌶となり、21年と比べて1万2000㌶減ったという。政府が掲げる農地確保の目標を下回る深刻な勢いだ。
農用地区域とは、市町村が10㌶以上のまとまった農地などを対象に設定する区域で、区域内の農地は転用を禁じている。
農水省は、農用地区域内の農地を30年に397万㌶確保する目標を掲げている。そのため、今度の通常国会で、食料・農業・農村基本法の改正に合わせ、農地の総量確保などを狙いとする法案を提出する。
転用を禁じる農用地区域の変更について国の関与を強めたり、地域計画内の農地の転用規制を強化したりするものだ。
これに対し、全国知事会は1月10日、農地の転用規制を強化する国の方針に懸念を表明し、地方分権の観点から、国による土地利用規制は「必要最小限」とし、地方の意見を十分聞くよう緊急要請を行った。
規制を強めるなどと言う一方で、昨年末の地域未来投資促進法に基づく国の基本方針改正では、促進法の特例を使った開発の場合に、優良農地を農用地区域から除外して農地転用を行う際の手続きを迅速化するとしている。
やっていることが矛盾している。
自治体に「指示」
だが、やはり見過ごしてはならないのは「国の権限強化」というキーワードだ。政府は、農地や水利施設の改良・保全について定める土地改良法について今年論議を進め、来年の改正を目指している。
これは施設の老朽化や人口減少に対応するのがねらいだとして、施設の更新整備事業を、国からの発意でも実施できるようにするというものだ。 土地改良区の運営基盤の強化に向けた議論や取り組みの進め方も法律で規定するのだという。
また、今度の通常国会では地方自治法の改正案も提出される。
非常時であれば、個別法に規定がなくても、国が自治体に必要な指示ができるようにするというものだ。
例えば、能登半島地震では、災害対策基本法に基づき設置された国の非常災害対策本部が指示を出せる。
だが、個別法の規定がなくても「国民の生命などを保護するのに特に必要な場合」は国が指示を出せるようにして、自治体は指示に応じる法的義務を負うという内容だ。
戦争国会粉砕を
地方を切り捨て農業を切り捨てておきながら、「弱体化してできないなら国がやりましょう」「非常時には国に権限を」などと言いなすその先にあるのは、沖縄・辺野古をめぐる代執行でも明らかな戦時強権国家だ。食料危機時の生産転換や流通制限を規定する食料有事法の制定など許してはならない。
今度の通常国会は紛れもなく戦争国会だ。労働者・農民・学生の力で断固粉砕しよう。