明日も耕す 農業問題の今 「放射線育種米」が全国に 突然変異で新品種増大
週刊『三里塚』02頁(1126号02面05)(2023/12/25)
明日も耕す 農業問題の今
「放射線育種米」が全国に
突然変異で新品種増大
秋田県は、それまでの従来品種に代えて、2025年から放射線育種米「コシヒカリ環1号」と「あきたこまち」と掛け合わせてつくった「あきたこまちR」に作付けを全面転換するという方針を決定した。
放射線育種とは、種子に放射線を照射して遺伝子を破壊し、人工的に突然変異を起こして新品種を作る技術だ。
「原子力の平和利用」として1950年から行われ、1966年に日本初の実用化された放射線育種作物として「レイメイ(黎明)」という米が品種登録された。
その後、放射線育種による品種は増え続け320品種以上といわれる。そのうち米が131品種と多数を占めている。
だからといって、疫学的にきちんと安全が検証されたわけではない。
DNA2本切断
これまでの放射線育種は、コバルト60が出すガンマ線が使われてきた。しかし、2015年に品種登録された「コシヒカリ環1号」(以下、環1号)ではイオンビームというものが使われた。
イオンビームはガンマ線に比べて高いエネルギーを持っているため、DNAの2本鎖を2本とも切断してしまう。その結果、修復の際にミスが起こりDNAの大規模な欠損、未知のタンパク質ができるリスクが生じる。
しかし、これを推進する政府、自民党、「科学者」は、「太陽の紫外線や宇宙線、大地からの放射線によって生じる突然変異も、放射線を人為的に当てて起こした突然変異も何ら差はない」と安全性を強調する。
だったらなぜ、もっと大々的に明示に宣伝しないのか。環1号が開発されたのはカドミウム対策だ。
危惧の声を圧殺
カドミウムの吸収に関わる遺伝子を破壊することで、有害なカドミウムがお米にほとんど吸収されないとうたっている。鉱山や火山の多い日本列島は全国各地にカドミウム高濃度汚染地域があった。農地のカドミウム汚染を減らす事業はさまざまに行われ、現在は全体の0・3%以下といわれている。にもかかわらず、農水省は2018年に、今後の米の主要品種を低カドミウム米にする指針を発表していた。
そして、日本全体で約300品種ある米のうち、すでに200品種で放射線育種米の開発が進んでいるという。
カドミウムの残留基準値を厳しくしている海外への販路拡大がねらいか。下水汚泥肥料に含まれるカドミウム対策か。
放射線育種から一気にゲノム編集米への転換をもくろんでいるのか。
さまざまな疑念が浮かぶが、ほとんどマスコミでも取り上げられていない。皆さんはご存じだっただろうか。
そしていま起きていることは、放射線育種への疑念や危惧の声を圧殺するバッシングだ。「風評被害」と言いなし、問題性の指摘に「作り話」と悪罵を投げかけている。新たな種の支配・強制を許すな!