「温暖化対策」で各国首脳がCOP28に集結 日米などが原発3倍化宣言 大事故、放射線被害無視の暴論だ

週刊『三里塚』02頁(1125号02面04)(2023/12/11)


「温暖化対策」で各国首脳がCOP28に集結
 日米などが原発3倍化宣言
 大事故、放射線被害無視の暴論だ


 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで11月30日に開幕し、190もの国と地域の代表が集まった。(写真
 しかし、それが出した主要な結論の一つは、「温暖化対策」の名のもとに世界の原子力発電の設備容量を2050年までに2020年の3倍にするというもので、この会議への怒りと失望が広がっている。米英がこの「原発3倍化宣言」を主導し、日、仏、カナダ、韓国、ウクライナ、UAEなどが賛同し、20カ国を超えた。
 ジョン・ケリー米大統領特使(気候変動担当)は、「科学と現実、エビデンスは、原子力なしでは50年までに温室効果ガスの排出量を正味ゼロにするのは不可能と示している」と主張した。
 3・11福島原発事故で無数の人々の健康と生活が破壊され、命が奪われた。その痛苦の歴史を根本からふみにじり、岸田が臆面もなく「原発3倍化」を唱えることなど、どうして許すことができるか! 戦争準備と原発推進(潜在的核武装)の岸田政権の正体がここに完全に露呈した。
 そして各国の「代表」がそれぞれの国情を背負いながら、二酸化炭素の排出量基準を押し付け合い牽制(けんせい)し合った。「大国・先進国」が国益を優先し、「小国・途上国」に矛盾を押しつけ犠牲にする構図は変わっていない。岸田首相はスピーチで「G7サミットで確認されたように、経済成長やエネルギー安全保障と両立するよう、ネットゼロ(温暖化ガス排出量正味ゼロ)という共通の目標を目指そう」と述べ、安全保障=戦争問題と関連付けてエネルギー政策を進める意思を示した。
 帝国主義者、各国の権力者、資本家階級は気候危機、環境破壊問題への取り組みを声高に叫びながら、解決する力も意思もないことがこの上なく明らかとなった。

環境破壊促進する資本主義

 確かに、今この地球環境が未曽有の危機に直面していることを直視せねばならない。暴風雨による大水害が米欧アジア大陸を襲っている。一方、アフリカ大陸は深刻な干ばつに見舞われ、砂漠化が進んでいる。気候の激変で住む場所を奪われて流浪する人々は「気候難民」と呼ばれるが、2022年における気候難民は全世界で3200万人を超えたとされる。
 23年は世界各地で観測史上もっとも高い気温が記録された。森林を焼き尽くす大火災が激発している。アマゾン森林の伐採・消失は止まっていない。気温、海流、土壌、生態系などが激変し自然回復力を失っている。
 言うまでもなく根本的原因は、資本主義下での人間の活動にある。
 元来資本の増殖運動において、自然を破壊し再生不能にすることに基本的にためらいはない。しかしその破壊行為が、ついには地球レベルで人類の生存条件そのものを脅かし押しつぶすほど大規模になった今日、大資本(とその前線司令部たる国家)は、「環境保全」が人類共通の課題であるかのように押し出しつつ、なおそこにもうけ口を求めて殺到している。
 たとえば自動車業界で進められているEV化は、「環境にやさしい」のか。EVのバッテリーに不可欠な希少金属リチウムの確保をめぐって、帝国主義各国(と中国)は激しい争奪戦を繰り広げている。リチウムの採掘地では、精製過程から生じる有毒廃液が住民生活を蝕んでいる。
 「脱ガソリン車」を主張するなら、車の生産台数を減らすのが道理だろうが、資本主義にはその選択肢はない。
 そして、成田空港第3滑走路、リニア新幹線、大阪万博、駅前再開発高層ビル......。労働者人民の生活に不必要なものが資材とエネルギーと労働力を投入して環境を破壊しながら際限なく造り続けられる。一方で庶民は「持続可能な社会を」「暮らしを見直せ」などと要求される。
 この資本主義に終止符を打つことによってしか人間の未来はないことを、COP28はあらためて示した。(田宮龍一)

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