明日も耕す 農業問題の今 企業不正で突如販売中止 種子法廃止の問題が露呈
週刊『三里塚』02頁(1125号02面03)(2023/12/11)
明日も耕す
農業問題の今
企業不正で突如販売中止
種子法廃止の問題が露呈
民間企業の活躍を阻害するとして、種子法が廃止されて5年、危惧されていた問題が明るみに出た。種子を供給する会社が行った長年にわたる偽装表示と突如の販売中止。生産現場は大混乱に陥った。
問題となったのは「三井化学クロップ&ライフソリューション」(東京都)が販売していた「みつひかり」。
12月2日付東京新聞「こちら特報部」に取り上げられたので、ご覧になった方もいると思う。
みつひかりは、牛丼チェーンや大手スーパーで採用されてきたコメだ。収穫量の多さが特徴で、全国で1400㌶近い作付面積がある。
同社が22年までに行っていた不正行為は①茨城産に愛知産を合わせるなど生産地の異なる種子の混合(16年以降)、②別の種類の種子を混合(17年以降)③発芽率「90%以上」と表示していたが多くは満たさず(19年以降)というもの。これらの行為は種苗法第59条違反の虚偽表示にあたる。
種子法廃止後、農水省は「これからは民間のみつひかりのような多収の品種をつくりなさいと」チラシをまき、農業白書でも宣伝した。それでこのありさまだ。
誰も責任取らず
事の発端は、同社による突然のみつひかり販売中止だ。生産農家は今年2月、突然「天候不順などで今年は品質が保証できず種子の販売はできない」と知らされ騒然とする。急きょ生産計画の見直しを迫られ、購入していた肥料はキャンセルできなかった。原因を追及する中で次々と不正が発覚。だが、農家の多大な損害に対して、消費者庁は「コメの種苗に製造物責任法の適用はない」と表明。
農林水産省は11月2日、「今後の改善が見込まれる」と同社を厳重注意するにとどめた。
誰も責任を取っていないではないか。
従前の種子法では、都道府県は公的資金を投じて種を開発。土地や気候に合う優秀な種を「奨励品種」と定め、保証書もつけて農家に提供してきた。だから安心して農家は種子を栽培できた。
多くの国が主食の種子については、国や地方自治体が安定供給する制度をもうけている。利益追求を目的とする民間企業が安定供給に責任を取ることはない。
タネを壊すな!
種子法が廃止されてから5年になるのに、民間企業が活躍しているという話は聞かない。他方、現在34の道県で種子法に代わる条例が制定され、地域のコメを守る取り組みが続いている。種子法廃止を撤回させタネを守ろう。
だが、このコメをめぐっていま、数年のうちに主力品種を「放射線育種米」に切り替えようという動きが起きている。
「コシヒカリ環1号」という品種は、重イオンビームでコシヒカリを突然変異させ、カドミウムの吸収を抑制するという。次号で取り上げる。