明日も耕す 農業問題の今 人口肉で食料問題解決!? フードテックは農業破壊
週刊『三里塚』02頁(1124号02面06)(2023/11/27)
明日も耕す 農業問題の今
人口肉で食料問題解決!?
フードテックは農業破壊
人工肉業界におけるトップ企業の1つ「インポッシブル・フーズ」に巨額の出資をしているマイクロソフト創業者のビル・ゲイツは、「人工肉を普及させれば気候変動と食料不足を一度に解決できる」と呼びかけている。
昨今、水田のメタンや牛のゲップが気候変動の「主犯」であるかのように言われている。
温室効果ガスの排出を減らすには今の農業・食料産業が最大の排出源なので、遺伝子操作も駆使した人工肉、培養肉、昆虫食など代替的食料生産が必要というのがフードテック推進の論理だ。
大量の温室効果ガスを出し、土壌劣化させ、水を枯渇させ、人間をウイルスとの危険な接触にさらす農業や畜産。これは近代化農業、工場型畜産が生み出した問題だ。
だから自然の摂理に従った生産方法にするというのではなく、それを逆手にとって現在の農業を否定しフードテックに置き換えるというのだ。
インポッシブル・フーズ社の創業者は「畜産をゼロにすること」が自分のミッションだと言う。
もくろまれているのは、農民がいなくてもAIがデジタル農業を営み、土がなくても野菜は育ち、鶏や豚や牛や魚や乳製品は遺伝子操作とバイオ技術で作り出す、そんな世界だ。
フードテックは根本的な食の破壊、究極の農業破壊だ。
新たな利益追求
では、フードテックの代替タンパク質は本当に環境に優しいのか。植物性代替食品は、主要な添加物を製造・加工するために、多大なエネルギーを必要とする。培養肉の施設における電力消費の問題も大きい。
また、単一栽培で大量に生産される遺伝子組み換え大豆が環境に与える影響も計り知れない。
こうした問題を不問に付しながら、将来の市場制圧をねらって、世界の大企業がフードテック新興企業に投資し、買収を行っている。
ガザでの虐殺に手を染めるイスラエルは、実は「フードテック先進国」だ。2018年の時点で311社ものフードテック企業がある。それらがアメリカの多国籍企業やバドワイザーを傘下に持つベルギーの企業などによって買収された。
フードテックとは、利益追求で食料・農業危機を引き起こした資本主義・新自由主義が、環境への配慮を口実に更に命や環境を蝕みながら、新たな利益追求の道を生み出そうとするものだ。
「安全保障観点」
それだけではない。22年6月、自民党は「細胞農業によるサステナブル社会推進議員連盟」を発足させた。事務局長を務める中山展宏衆院議員は「食料安全保障の観点からも日本は動物性たんぱく質の生産方法を模索しないといけない。培養肉はその選択肢の一つとなり得る」と述べている。
資本家の利益のために戦争に駆り出され、その戦争のために食べ物ならざるものを食わされる。断じてNO!だ。