明日も耕す 農業問題の今 「不測時の食料安保」叫ぶ 基本法改悪の狙いとは?

週刊『三里塚』02頁(1122号02面05)(2023/10/23)


明日も耕す 農業問題の今
 「不測時の食料安保」叫ぶ
 基本法改悪の狙いとは?

(写真 基本法見直しへ農水省で会合【5月】)


 前号に続き、「食料・農業・農村基本法」(以下、「基本法」)の改悪について取り上げる。今回は食料・農業・農村政策審議会の答申の内容から核心的な部分に焦点を当てて、改悪のねらいを考察していきたい。

 まず、1961年にできた「農業基本法」に替えて現行の基本法が制定されたのははどういう転換だったのか。
 現行基本法は、1999年日米新安保ガイドライン関連法・周辺事態法の制定とともに成立した戦争体制構築の一環だ。農民の戦後的権利を否定する戦後農政の原理的転換で、食料安保論を前面に押し出すという、戦争を決断した日帝の食料政策がその本質だ。
 しかし、「不測時における食料安全保障」については、「凶作、輸入の途絶等の不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある場合」(第2条第4項)に「国民が最低限度必要とする食料の供給を確保するため必要があると認めるときは、食料の増産、流通の制限その他必要な施策を講ずるものとする」(第19条)と規定しているだけだ。
 食料危機に際した管理体制について、「平時から検討し、準備しておく必要があるという規定」(審議会答申)でしかなかったのだ。

現行法は限界に

 こうした規定に基づいて「不測時の食料安全保障マニュアル」が作成され(2002年3月)、その後内容も改定され、2012年には「緊急事態食料安全保障指針」と名称も変更された。
 だが、参戦国化に突き進む岸田政権にとって、このような指針レベルのものを打ち出しているだけでは、もはや全く不十分なのだ。
 答申は言う。「不測の事態が発生する蓋然性(がいぜんせい)も高まってきていることから、より一層不測時の食料安全保障への対応を考えておく必要がある」と。そして、「法的な根拠の整理や必要な対応の検討等を行うべき」だと現行基本法の課題を指摘している。

戦争体制づくり

 では、どのような課題があるというのか。
 「指針は法令に基づくものではなく、それ自身が不測時の制約を伴う措置を行う根拠にはなりえない」「政府全体での意思決定を行う根拠とはならない(指針は農水省が出しているに過ぎない)」「制約を伴う措置を講じるためのトリガーが明確ではない(何をもって発動するかということ)」
 指針では実効性がないというのだ。
 つまり、今回狙われている改悪は、食料危機時の生産転換や流通制限を規定する食料有事法など、具体的な法整備や施策を進めることができるように、まず土台となる基本法を書き改めようというものだ。
 不測時=有事における食料安全保障を準備段階から実行段階へ移す大転換、まさに戦争体制への大転換なのだ。 

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