明日も耕す 農業問題の今 食料・農業基本法改悪狙う 改憲、戦争推進と一体で

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週刊『三里塚』02頁(1121号02面04)(2023/10/09)


明日も耕す 農業問題の今
 食料・農業基本法改悪狙う
 改憲、戦争推進と一体で

(写真 食料・農業基盤強化本部で岸田がまとめの発言【6月2日】)


 農林水産省の有識者会議は9月11日、「食料・農業・農村基本法」の見直しに関する最終取りまとめを決定し、野村哲郎農相(当時)に答申した。岸田政権は来年の通常国会での基本法改悪を狙っている。
 今回の基本法見直しは、1961年の農業基本法、1999年の現行基本法の制定に続くもので、「3度目の農政のアップデート」とか「基本法3・0」などと言われる。もちろんそんなスマートな言葉で表されるようなものではない。
 基本法は農政の基本理念を示すもので「農政の憲法」とも称され、これを変えることは歴史的大転換なのだ。
 61年の農業基本法は、農業生産性の向上と農家所得の増大を掲げ、高度経済成長とともに広がった農工間の所得格差の是正がうたわれた。そのもとで大型農業機械の導入など農業の近代化が推し進められた。

農業を切り捨て

 その結果、労働力の大幅削減で農村から都市部への低賃金労働者を大量に生み出す一方で、専業農家は激減した。
 夢を振りまいた農政は破綻し、農産物自由化、農業予算の削減など、農業・農村破壊の農政へと変転していった。
 そして、1995年に食管法が廃止されるなどする中で、文字通り農民切り捨てを決定づける大転換が現行の「食料・農業・農村基本法」だ。
 四つの理念が掲げられているが、一番最初に出てくるのは「食料の安定供給」だ。法律の名称にも示されるように、農業・農民問題ではなく、食料問題として位置づけが変えられたのだ。
 新自由主義の下で安い食料をいかに安定的に供給するかということが中心にある。農業・農村を語る残りの理念は、切り捨てを塗り隠すものでしかない。
 これを土台に、その後の小泉構造改革や安倍農政の農業つぶしが進められた。
 現行基本法の施行から20年以上が経過する中で、気候危機やコロナ禍など当時は想定していなかったさまざまな課題の浮上も今回の見直しの理由とされている。

「食料安保」掲げ

 しかし、最大のねらいはウクライナ戦争を口実とした食料安全保障だ。
 マスコミの中には、農政全般にわたるべき答申が「安全保障に偏りすぎ」との論調もある。だが、食料安全保障=戦争体制づくりこそが岸田政権の主目的であり、これと徹底的に対決しなければならない。
 不測時(=戦時)における食料安全保障を理念・基本法として確立し、食料有事法など戦時に向けた具体的な法整備を進めようというのだ。
 今回の答申でも、食料危機時に生産転換や流通制限を指示する体制の検討、食料安全保障の強化に向けた農産品の国内生産の拡大や価格転嫁の推進を提言している。
 改憲と一体の基本法改悪を許すな!
 次号で詳しく答申の内容を見ていきたい。

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