政府が「公共インフラ整備計画」原案 台湾有事で空港・港湾利用もくろむ

週刊『三里塚』02頁(1119号01面04)(2023/09/11)


政府が「公共インフラ整備計画」原案
 台湾有事で空港・港湾利用もくろむ


 8月25日、政府は、総合的な防衛力強化に向けた関係閣僚会議の初会合を開き、「台湾有事」に備え全国の空港・港湾を整備し軍事利用を推進することを明らかにした。内閣官房長官を議長に、財務・防衛はもとより主要大臣が参加した。
 この会議は、昨年12月に改定した国家安全保障戦略の柱の一つである「防衛力の抜本的強化を補完する」施策として、産軍の共同による研究開発とインフラ整備のあり方を議論するものだ。だが、産軍一体化という内容および「府省間の縦割りを打破」という手法自体が、これまでと一線を越え、戦争突入を前提にして初めて可能とするものである。公共インフラ整備においては軍事的位置づけを優先し、実行政策の順位の入れ替えが行われた。しかも、ここで論議されただけで各省方針として新年度予算の概算要求に入れ、早急に実現させるとのことだ。このように国家安保戦略のもとで国の在り方の大転換が進行しつつある。
 会議の正式名称は、「総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議」で、対象は2部門で「研究開発」と「公共インフラ整備」。「研究開発」では、軍事と産業の両面で利用できるデュアルユース(軍民両用)技術の開発や実用、「情報通信」「無人機の開発」など9つの分野を指定し、いわゆるゲームチェンジャーとなりうる次世代先端技術の開発と軍事実用化に力を投入することを決めた。

戦闘機・護衛艦の出撃拠点に

 「公共インフラ整備」では、全国約40の空港・港湾を対象に有事に備えた政府計画原案が出された。政府原案の基本は、「南西諸島を中心としつつ、その他の地域においても、必要な空港・港湾等について、民生利用とのデュアルユース(軍民両用)を前提として、自衛隊・海上保安庁の艦船・航空機が利用」するというものである。
 そして自衛隊・海上保安庁が、「平時から円滑に空港・港湾等の利用ができるよう、インフラ管理者との間で『円滑な利用に関する枠組み』を設ける」とする。そのためにこれらの施設を、特定重要拠点空港・港湾(仮称)とするとしたのである。つまり、政府が軍事上の拠点となる空港・港湾を「特定重要拠点空港・港湾」として指定することで、艦船や航空機を平時から有事まで切れ目なく使えるように建設整備を行うとともに、自衛隊や海保が管理者と「円滑な利用に資する枠組み」を定め、住民の反対を抑え込んでしまおうというものだ。
 今回提出された政府原案は、南西諸島、九州・四国地方を重点に次のようなものが検討された。港湾では、①与那国島の新たな港湾整備(そもそも大型の艦船が接岸できないので護衛艦や巡視船が接岸できるようにする)、②海上保安部の拠点である石垣港の岸壁延長、③那覇港、④博多港、高松港、敦賀港の岸壁整備などである。
 空港では、①新石垣空港・那覇空港を大型の航空機が離着陸できるような滑走路延長、駐機場の新設、誘導路の整備を検討する。また、②鹿児島空港、宮崎空港、高知空港の滑走路の延長に取り組むとする。
 まさに、国家安全保障戦略の具体化そのものである。また、政府原案の基本で「南西諸島を中心としつつ、その他の地域においても、民生利用とのデュアルユースを前提として利用」と述べているように、全国で実現されるべきものとして今後拡大する。この際のテコが「軍民両用」という形態を一般化・常態化させることだ。そのことで全公共インフラを軍事の下に平素から統括していくことである。

労働者住民の反対をつぶし

 今年度の防衛白書では、部隊を迅速に機動展開させるため、「民間の輸送力を最大限活用する。また、自衛隊の平素から空港・港湾施設などの利用拡大や補給能力の向上を実施」すると繰り返し強調している。民間労働者の軍事動員への抵抗、地域住民の基地反対・公共施設の軍事利用反対によって、自衛隊・米軍は多くの空港や港湾を利用できないでいる。ここを反動的に突破することなくして、日帝・自衛隊は戦争体制をつくり上げられない焦りに駆られているのだ。
 今回の公共インフラ整備計画の政府原案は、空港・港湾の実戦シフト化に踏み出したものである。日本の労働者人民は、岸田の中国侵略戦争政策を一つも許すことなく、戦争絶対反対の闘いを今秋爆発させよう。
 三里塚闘争の軍事空港反対の闘いの意義がますます決定的となっている。50万米軍受け入れ基地と位置付けられている成田空港は、反対同盟の闘いによって軍事利用が阻止され続けている。浜田靖一防衛大臣は、「成田空港については取り決めで、軍事利用は絶対に認めないとされている」「自衛隊が既存施設を平素から柔軟に利用できるよう関係省庁や関係団体に協力を要請」と危機感をむき出しに成田の軍事空港化を推進している。三里塚闘争はあらゆる反動を打ち破り、日帝の戦時体制構築の要である公共インフラ軍事使用攻撃と真正面から対決する。
 戦時土地収用である市東さんの農地取り上げを粉砕し、10・8三里塚全国集会の大結集で、国家安全保障戦略をズタズタに粉砕しよう。
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