明日も耕す 農業問題の今 イギリスがTPPに加盟 安保と一体の「経済連携」

投稿日:

週刊『三里塚』02頁(1117号02面04)(2023/08/14)


明日も耕す 農業問題の今
 イギリスがTPPに加盟
 安保と一体の「経済連携」

(写真 TPP閣僚会合で英国加盟承認【7月16日】)


 TPP(環太平洋連携協定)に加盟する日本やオーストラリアなど11カ国は7月16日、ニュージーランド・オークランドでの閣僚級会合で、英国の新規加盟を正式に承認した。これでTPPは12カ国体制となった。
 TPPは、日本のほかオーストラリアやカナダなどアジア太平洋地域の11カ国による経済連携協定で、モノの関税だけでなく投資の自由化を進め、知的財産や電子商取引など幅広い分野で共通のルールを定めている。
 当初12カ国で署名したが、トランプ米大統領が17年1月に協定離脱を表明。現在の11カ国が参加する形となった。
 TPPの発効以降、「主な品目では国内農業への悪影響は見られない」と報じられるが、関税削減は多くの品目が段階的であり、実はTPPのほぼ全ての品目の関税撤廃時期は、協定発効後11年目(2029年4月1日)だ。影響が明らかになるのはこれからだ。

欧州圏に拡大?

 イギリスの加盟については「コメの関税撤廃を勝ち取った」「販路拡大につながる」と宣伝されるが、日本とイギリスとの間については、すでに経済連携協定が発効していて、大きな変化は生まれない。
 「アジア太平洋地域の協定がヨーロッパの経済圏にも広がる」といっても、イギリスはすでに、ブルネイとマレーシアを除く各加盟国と個別に貿易協定を結んでいるためそれほど変わらない。
 イギリスからすれば、TPP加盟国の半分以上が歴史的な関係が深い英連邦(コモンウェルス)諸国であり、英米豪3カ国による軍事同盟(AUKUS)の締結とともに安全保障の観点からもTPPに加わることが重要なのだ。

次の焦点は中国

 TPPには現在、中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイが加盟を申請していて、ウクライナも今年の5月に加盟申請をした。
 台湾と中国の加盟申請をどうするかが次の焦点だ。協定を離脱しているとはいえ、アメリカ・バイデンが進める中国侵略戦争政策と無関係には進まない。
 TPPの他にも、中国のほか日本やASEANなどが参加するRCEP(地域的な包括的経済連携)が去年発効した。
 アメリカはこれに対して、IPEF(インド太平洋経済枠組み)を立ち上げている。
 大型貿易協定は、参加国にとっては経済連携の強化となるが、同時に非参加国を排除して経済のブロック化を進めるものとなる。
 2018年の発効以来、TPPの加盟国が増えるのは初めてだ。戦争政策と表裏をなす合従連衡策として、貿易協定をめぐる動きは今後ますます強まっていく。
 そのためのカードとして、当事国の農産物や労働者民衆の生活が差し出されることなど許してはならない。
 大型貿易協定に対して、今こそ国際連帯で闘おう。

このエントリーをはてなブックマークに追加