明日も耕す 農業問題の今 「特定技能」を農業に拡大 戦時労働力確保が狙い

週刊『三里塚』02頁(1114号02面04)(2023/06/26)


明日も耕す 農業問題の今
 「特定技能」を農業に拡大
 戦時労働力確保が狙い

(写真 戦時下の援農動員【1945年頃】)


 岸田政権は6月9日、熟練した技能を有する外国人労働者が取得できる在留資格「特定技能2号」を現在の「建設」「造船」の2分野から11分野へ拡大する案を閣議決定した。新たな分野には農業も含まれる。 

 特定技能は人手不足が深刻な特定産業分野で外国人を受け入れるためという理由で、2019年4月にスタートした。
 在留期間が通算5年の「1号」と、在留期間の更新回数に上限がない「2号」がある。
 1号は相当程度の知識・経験、2号はより熟練した技能と規定され、3月末現在の1号の在留者数は15万4864人だが、2号はわずか11人しかいない。
 家族帯同の永住が可能となる2号を「事実上の移民だ」とする自民党内からの反発で、認定要件が厳格化された結果だ。
 分野拡大は、この状況を変えて、さらなる外国人労働力の確保に転換しようとするものだ。
 特定技能制度の分野を拡大する一方、技能実習制度は廃止して、国際貢献の建前をかなぐり捨てた「人材確保・育成」を目的とする新制度を創設するという。
 対象分野の拡大について、経団連の十倉雅和会長は「少子化で日本の生産人口が減っていく中、特定技能を持つ外国人労働者は非常に重要になる」と評価した。
 はたしてそれだけか。

強制連行の歴史

 真のねらいは戦時労働力確保に向けた転換だ。
 15年戦争時、中国侵略戦争が泥沼化するなかで日本政府は1938年に国家総動員法を施行し、労働者人民を根こそぎ戦争に動員していった。とりわけ日帝が植民地支配していた朝鮮からは、39年から45年の敗戦までの間に80万人以上が日本に強制連行され奴隷労働を強いられた。
 強制連行というと工場や鉱山が想起されるが、それだけではない。
 戦争末期、少年たちの食料増産隊(農兵隊)が組織される一方、陸軍に「農耕勤務隊」が編成され、朝鮮半島から徴用された人々が燃料用のイモの増産のためとして農作業に従事させられだ。

「食料安保」掲げ

 かつての強制連行と特定技能の分野拡大は別の話だろうか。
 岸田政権は中国侵略戦争に突き進むために、過去の戦争犯罪を「終わったこと」「なかったこと」とし、植民地支配をも正当化しようとしている。韓国・ユンソンニョル政権が打ち出した徴用工問題の「解決策」も軌を一にする動きだ。
 戦争国家化をねらうからこそ、「事実上の移民政策につながる」などの慎重論も吹っ飛ばし、入管法の改悪と一体で、特定技能制度を全面化させたのだ。「新たな徴用工」としての労働力確保に舵を切ったのだ。
 農業においても、「平時からの食料安全保障」を掲げる岸田政権にとって、農業労働力の確保は急務だ。
 現代の国家総動員体制づくりを許さず、岸田政権を打倒しよう。

このエントリーをはてなブックマークに追加