明日も耕す 農業問題の今 韓国有機農業政策の現状 認証基準強化で農家負担増

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週刊『三里塚』02頁(1112号02面04)(2023/05/22)


明日も耕す 農業問題の今
 韓国有機農業政策の現状
 認証基準強化で農家負担増

(写真 2015世界有機農業エキスポで【韓国・ケサン】)

 農業の環境負荷低減をうたった「みどりの食料システム戦略推進法」が昨年4月に成立し、有機農業を推進するという施策も散見されるようになった。こうした動きを考える上で、他国の例も参考にしてみたい。

 日本有機農業研究会の機関誌『土と健康』5・6月号に、アジア農業農村研究院院長・金氣興(キム・キフン)さんによる「韓国 有機農業の現状 有機農業拡大を阻む問題と新たな取り組み」が掲載された。
 韓国では低農薬から無農薬、そして転換期有機を経て有機農産物に至るという段階的な発展のために「親環境農業」という名で有機農業政策が進められた。

発展後に減少へ

 1997年、親環境農業育成法の成立以降、韓国政府は認証を前提とした親環境農業を推進。認証を受けている農家に対して直接支払いをはじめ、さまざまな支援を積極的に行った結果、親環境農業は2010年代まで急速に発展してきた。
 しかし、農薬使用基準の2分の1まで農薬使用が許容されていた「低農薬農産物認証」は、親環境農業の中では基準が低く、消費者の理解が得られず混乱を招くという理由から、2015年に全面廃止された。
 親環境農業の認証農家の中で、最も数が多かったのが低農薬農家だったことから、多くの農家が親環境農業をやめることになった。
 低農薬認証がなくなれば無農薬に転換していくというねらいがあったようだが結果は反対で、生産者の間に有機農業の原理、原則が定着せず、支援が途絶えると、慣行農業に戻ったのである。
 補助金の不正受給を狙った偽認証問題から政府は認証基準強化一辺倒になり、それが農家には非常に重い負担になって親環境農業の実践農家はさらに減っている。
 飛散による農薬検出があれば、非意図的だと証明するために、農家が発生源を探さなければならないという理不尽な状況が生まれている。
 韓国政府は、精密農業、つまりスマート農業を何でも制御できる技術として第一に取り上げているが、これで問題を解決することはできない。

ラベルに頼らず

 他方、安全な食料の安定供給や生態系の保全などの公益機能に焦点を当てた公益直接支払制度の改善が進められている。 また、「高齢者や障がい者、子どもや青少年、女性、新規就農者などの弱者を対象に農業活動によってケア、教育、仕事の場になる社会的農業という実践が広まっていて、そのような農場は、だいたい有機農業が基盤になっている」という。
 日本に類する話、参考になる話などさまざまだが、やはり有機認証というラベルに頼るのではなく、「もともと有機農業の持つ価値と原理をいかに守っていくのかが、これからもっと大事になっていく」ということに尽きる。有機農業の根本をねじ曲げるような政策を許してはならない。
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