明日も耕す 農業問題の今 加速する企業の農地所有 改正構造改革特区法成立
週刊『三里塚』02頁(1111号02面03)(2023/05/08)
明日も耕す 農業問題の今
加速する企業の農地所有
改正構造改革特区法成立
企業の農地所有の特例を盛り込んだ改正構造改革特区法が4月26日、参院本会議で可決、成立した。国家戦略特区の兵庫県養父市で認められた企業の農地所有の特例が、他の自治体も利用できるようになる。
9月1日から施行される改正法は、自治体による買い戻しを可能にすることや農業の担い手不足などを要件に、適用を求める地方自治体が国に申請するしくみだ。
農家の後継者不足や耕作放棄地拡大などの問題をかかえる自治体にとっては、企業の参入で農地の再生や有効活用が可能になるというのだ。
国が定める国家戦略特区と地方自治体が申請する構造改革特区では、手法は異なるが企業の農地取得を認めることでは同じだ。
今回の改正で、さまざまな要件で規制を課しているといっても、どんどん緩和されていくことは火を見るより明らかだ。
規制を次々緩和
企業が農地を借りて農業に参入することは、いまや当たり前のようになり、20年末で約2500社に達している。これは、03年に構造改革特区で導入された「農地リース特区」に始まり、05年には全国展開に拡大。そして09年には農地法が改正され、リースでの企業の農地利用が全面的に認められるという経過をたどった。
いったん道を開けば、なし崩しになっていくことがここに表れている。
地方自治体が申請し、国は認可するだけとなれば、首長の考え方ひとつで企業の農地取得が実現しやすくなる。
しくみはちょっと違うが、典型的なのが本紙1108号で取り上げたグッドマンの誘致だ。
多古町空港利権
これは知事の権限で認定が可能になる「地域未来投資促進法」を用い、成田空港に隣接する多古町の農地を活用して、航空物流施設を建設するというものだ。国際的な不動産会社・グッドマングループを呼び込むために、熊谷俊人知事の側近が内々に交渉を重ねてきたと報じられているが、それだけではなかった。
「『国際航空物流拠点』が多古町に? グッドマン来る!」の文字がおどる自由民主党多古町支部の宣伝物は、「グッドマンは、所一重町長時代に熊谷知事との連携の中で始まり、林幹雄先生に後押しして頂いて実現」と得意げに書いている。
所町長と言えば、「自民党・林幹雄が当選しなければ機能強化が進まない」と21年11月の衆院選の際、ラインで職員に投票を呼びかけ、公職選挙法違反で逮捕された人物だ。背後には、成田空港拡張と多古町の開発利権をめぐる競争と業者の癒着があると言われていたが、あからさまな自己暴露ではないか。
地方自治体と結びついた企業による農地取得を容易にすれば、こうなるのだ。国家戦略特区ではできなかった全国展開を、しくみのすり替えで押し通すことなど許してはならない。