「技能実習廃止」のペテン 労働力確保へ看板書き換え
「技能実習廃止」のペテン
労働力確保へ看板書き換え
4月10日、外国人の技能実習・特定技能両制度の見直しを検討する政府有識者会議が開かれ、これまでの議論をまとめた中間報告書のたたき台を示した。技能実習を廃止し新制度の創設を提案しているが、狙いは何か。
中間報告書案では、「制度目的と運用実態の乖離(かいり)」を挙げて「人材育成を通じた国際貢献のみを掲げたままで労働者として受け入れを続けることは望ましくない」と唱えた。
そして、新たな制度の目的に、技能実習にはない「人材確保」を盛り込み、労働力として明記することを求めた。
外国人が日本で学んだ技能を母国に持ち帰るという国際貢献の名の下で始まった技能実習制度は、当初からその実態が単純作業の労働力不足を補うものだった。「現代の奴隷労働」「現代の徴用工」として世界的にも批判を浴びてきた。
廃止を求める闘いに追いつめられ、また国際的な人材獲得競争から取り残されるとの危機感から「廃止」に踏み込まざるをえなくなったのだ。
移民は認めない
だが、「労働力として明記」を求めながら、「人材育成」制度と位置づけを残し、技能実習制度の枠組みを引き継ごうとしている。
「労働力」と言い切らずに、期限つきの制度を維持するのは、「一定規模の外国人を期限なく受け入れ、国家を維持する『移民政策』を採る考えはない」(斎藤健法相・東京新聞)からだ。
移民を認めず、ペテン的に労働力を確保しようというもので、現在国会で審議されている入管法の改悪と一体の攻撃だ。
また、転籍制限を「従来よりも緩和する方向」で検討するとしている。
現行制度で、実習生が同じ職種の企業に移る「転籍」を認めないことが悪質な雇用主の人権侵害を助長しているからだと言うが、それだけか。
新たな「徴用工」
2017年6月の国家戦略特区法改正による「農業支援外国人受入事業」では、外国人労働者を派遣会社が雇って農家に派遣できるようにした。農繁期に柔軟に働けるよう複数現場への派遣も可能とした。
だが特区が導入された愛知県では、「派遣先が複数で責任があいまい」と指摘され、労働条件の厳しさから実習生の失踪が相次いだ。
この先行事例に示されるように、人材確保が主眼の制度における「転籍自由」とは、外国人労働者の自由ではなく、より使い勝手の良い労働力のことなのだ。
2020年の農業分野における外国人労働者数は、過去5年で1・9倍に増加し、その9割近くが技能実習生だという。技能実習生がいなければ成り立たない農業の実態は、家族農業や村落共同体を破壊してきた新自由主義の結果だ。そして、企業の農業参入においてこそ必要な労働力だ。
新たな「現代の徴用工」を許すな! ペテン的な制度改革を入管法改悪もろとも打ち破ろう。