国交省OBを社長にしろ 「空港施設」人事介入で露呈した官僚の権威主義と縄張り意識

週刊『三里塚』02頁(1110号02面03)(2023/04/27)


国交省OBを社長にしろ
 「空港施設」人事介入で露呈した官僚の権威主義と縄張り意識



(写真 本田勝)

(写真 山口勝弘)


 国土交通省の元事務次官(官僚トップ)が空港関連の民間会社に対し、「国交省出身者を社長に就けろ」と人事に介入しようとしたことが大問題になっている。
 株式会社「空港施設」は羽田など各地の空港でターミナルビル、格納庫、事務所、ホテルなどの管理・賃貸(国有地を借りて航空会社に貸す)、あるいは熱供給、給排水、電気通信などを手がける企業だ。

天下り先確保へ「失地回復」狙う

 2022年12月13日、国交省元事務次官の本田勝(東京メトロ現会長)が、空港施設を訪れ社長と会長に面会を求めた。そして本田は、同社の副社長である山口勝弘(元国交省東京航空局長)を次の役員人事で社長にするよう露骨に要求したのである。
 本田は自身の立場を「有力な国交省OBの名代だ」と説明し、「方針が固まった」「国交省出身者を社長にさせてほしい」「そうなれば省としてあらゆる形で会社をサポートする」などとまくし立てた。
 どこからどう見ても本田の言動は、利益誘導もちらつかせながら「国交省」の権威を笠に着た、役員人事への威圧的な介入だ。
 空港施設がかかわる事業は国交省が多くの許認可権を握っており、それを背景にして1970年の設立から半世紀以上、同社では国交省OB社長が7代も続いてきた。
 ところが近年、そうした天下り社長の肝いりで出資したホテル事業が巨額の損失を出すなど経営の悪影響が目立ち、空港民営化の流れにも乗って、2021年にはJAL出身の現社長、ANA出身の現会長が誕生した。
 この状況にあせり、本田は権威主義と縄張り意識丸出しで「失地回復」を狙って、「トップを国交省OBに戻せ」とねじ込みに直談判に及んだというわけだ。
 ちなみに東京メトロは全株式を国と都が保有する事実上の国の子会社であり、本田がそのトップの地位にいるのも国交省OB人事の一環と言える。
 では本田に「社長職を」と強く推された国交省OBの山口副社長とはいかなる人物か。
 それまでただの「取締役」だった山口は、空港施設の21年5月の役員人事の会議で「自薦」と称して「国交省の意向だ。OBのオレを(代表権のある)副社長にしろ」とあからさまに要求し、押し通した。同社が羽田で国有地を借りていることにも触れ、「(国交省)航空局側から見れば、協力の証しだと思う」と発言した。
 今回の本田訪問をきっかけにこの山口の牽強付会(けんきょうふかい)の自分昇格人事があらためて問題視され、空港施設は「検証委員会」の設置を発表した。とたんに山口は追及をおそれて「一身上の都合」を理由に4月3日に辞任してしまった。
 恥知らずにもほどがあるというものだ。

田村NAA社長同じ穴のムジナ

 現在の国家公務員法では現役官僚による天下りの斡旋が禁止されていることで、各省庁では天下りポストの確保のために有力OBが動いている。とりわけ国交省官僚・OBは自らが握る権限を利用して関連会社、関連業界を領地として支配し、私利私欲を満たしているのだ。
 本田と山口の驚くほど似通った態度がそのような国交省の体質を完全に証明している。元国交省航空局長でNAA社長の田村明比古も同じ穴のムジナだ。
 庶民が生活苦に追われている時に、航空業界に巣食う彼らは法外な役員報酬と利権に群がり、天下り先の縄張り争いに明け暮れているのだ。
(田宮龍一)

このエントリーをはてなブックマークに追加