明日も耕す 農業問題の今 「企業の農地取得解禁を」 特区法改悪へ衆院審議入り
週刊『三里塚』02頁(1109号02面04)(2023/04/10)
明日も耕す 農業問題の今
「企業の農地取得解禁を」
特区法改悪へ衆院審議入り
昨年12月、国家戦略特区諮問会議は、兵庫県養父市に限って認めた企業による農地取得の特例を全国展開しないと決定した。これに代わり、企業の農地取得を認める構造改革特区法などの改悪案が衆議院で審議入りした。
養父市で国家戦略特区の制度を利用した農地取得をリードしていたオリックスが3月で、参入した農業事業から全面撤退した。
オリックスは、社外取締役だった竹中平蔵が国家戦略特区諮問会議の民間議員を務めるなど、企業による農地取得の代名詞のような会社だった。だが、計画通りには収益が上がらなかったのだ。
もうからなければ企業は撤退する——農地取得への批判としてずっと言われていたことが現実に示された。
このように国家戦略特区で頓挫したにもかかわらず、岸田政権はあくまでも企業による農地取得に道を開こうとしている。国家戦略特区で認めた企業による農地取得の特例を、構造改革特区において可能となるように、今国会で法律を変えてしまおうというのだ。
始まった審議で、岡田直樹地方創生担当相は「国家戦略特区法に規定されている法人農地取得事業を構造改革特区法に基づく事業に移行するため」とあからさまに趣旨を述べている。
なし崩しの緩和
構造改革特区は小泉政権の目玉政策として2002年に創設された。「実情に合わなくなった国の規制を取り除き、民間企業や自治体の創意工夫に富んだ経済活動を促し雇用を創出する」のが目的だとされる。
酒税法の規制を緩め、民宿などでのどぶろく製造を認める「どぶろく特区」がよく知られている。
だが、企業が農地を取得できないことは、「実情に合わなくなった国の規制」という類の話なのか。構造改革特区で扱うようなことなのか。
構造改革特区は、国が主導する国家戦略特区と違い、各地方自治体が申請した計画を国が承認するしくみだ。
国策レベルの事柄を地方自治体の扱いにして、ハードルを下げてしまおうという、なし崩しの規制緩和だ。
これは前号で取り上げた成田の規制緩和で、「地域未来投資促進法」が用いられたのと同様のやり方だ。
戦時徴発への道
農地を取得しなくても貸借によって企業の農業参入は進行している。必要性も乏しいのに、なぜ賃借ではなく所有にこだわるのか。農地を守っている「規制」を取り払うことに、その目的があるからだ。とにかく農地を奪って、国や企業が自由に使えるようにしていこうということなのだ。
これは大軍拡予算の成立強行と一体で、戦時徴発への地ならしだ。ほかにも、農地を守るための制度がどんどん解体されようとしている。
戦争に向けて、農地を奪おうという動きを許してはならない。