破産を深める機能強化
　「『新しい成田空港』構想中間とりまとめ」批判
　☆「経済安保」叫び軍事転用を狙う
　☆老朽化と構造的欠陥で競争敗退

　ＮＡＡは３月30日、「『新しい成田空港』構想中間とりまとめ」を発表した。その概要は、①３つの旅客ターミナルを１つの新たな旅客ターミナルに統合、②連結する鉄道やバス、道路網の再編・増設、③新貨物地区の建設などである。
　民間会社であるＮＡＡにこのような大再編・建設事業を遂行できる運用管理や財政上の能力はない。新旅客ターミナル予定地は、駐機場ならびに滑走路への誘導路などが交差している地区だ。ターミナルビルだけでなく、ここにアクセスする鉄道・道路および巨大コンコースを建設しなければならない。このような土木建設事業を空港運用を停止することなく遂行するという。航空機の過密運航をしながら施工するならば、事故は不可避である。また、航空・空港労働者の労働強化が必至である。
　その上で、「新しい成田空港」構想の特徴を指摘しておきたい。
　第一に、政策の理念に「経済安全保障」を掲げた。ＮＡＡは「成田空港が目指すべき姿」として「成田空港が諸課題を克服し、経済安全保障上も重要な拠点としてその使命を果たしていく」とアピールしている。ＮＡＡが、「経済安全保障」を露骨に叫ぶのは初めてのことだ。先端技術産業の対中輸出規制を見れば明白なように、「経済安保」のもとで進められる経済規制や政策は、中国侵略戦争―世界大戦を見据えた軍事大国化と一体だ。明らかに軍事転用までを含んだ巨大空港建設であることが表明されたのだ。
　第二に、国内外の空港間競争からの脱落の危機の深さだ。「既存施設については、リニューアルを繰り返し実施してきているものの、増改築では対応できない構造的な問題や深刻な老朽化が進行」「開港当初から変わらない分散・非効率な空港施設レイアウト」「成田空港のコンセプトや施設配置は半世紀以上前に決定されたもの」云々。
　本末転倒だ。計画当時の運輸省の行政能力の低さ、政争による空港位置決定のデタラメ、人民を犠牲にした暴力の発動による空港建設強行、その帰結として欠陥だらけの成田空港となったのだ。

周辺住民犠牲に

　第三に、この事業の必要性の根拠にＮＡＡは、「年間発着回数50万回化目標」というすでに破産した需要予測を繰り返している。
　首都圏空港機能強化の際に算定された航空需要予測は、２０１０年代の航空機発着回数にＧＤＰの伸び率を恣意的に当てはめたものである。この需要予測の算定式そのものが、赤字地方空港の建設を促進させたものとして批判の対象とされている。今や、ＧＤＰの増加も望めず、ビジネス便も減少する中で「年間発着50万回化」というのは、「空港拡張」のための詭弁でしかない。
　ＮＡＡは、需要増大の政策をＬＣＣ誘致に加えて、新たに貨物便の基地化と乗り継ぎ客の増加を見込んでいる。それ自体、ＮＡＡの経営破綻を救うものにはならないが、そこで進行するのは周辺の環境破壊と周辺住民の騒音被害の拡大である。第３滑走路建設に合わせた倉庫の建設が農地をつぶして進められようとしている。貨物便、乗り継ぎ便は深夜早朝便と過密時間帯に発着が集中することから、航空機騒音はさらに激甚化し命を削る。夜間早朝飛行差し止め訴訟に立った周辺住民への敵対だ。
　第四に、ワンターミナル計画は、「成田空港機能拡張計画」で掲げられていた第４ターミナル構想の破産に他ならない。もともとＮＡＡが念頭に置いたのは木の根地区から菱田地区にかけての第４ターミナルの新設だった。予算は８千億円と想定されたが、当初から低く見積もっても１兆円以上といわれた。しかし、第３滑走路建設で５千億円の資金を調達したＮＡＡにその財力はない。そもそも第３滑走路建設は付帯施設の建設費調達問題を先送りした見切り発車そのものだったのだ。コロナ禍で、大赤字を続けるＮＡＡに第４ターミナルを建設する資金を調達することなど不可能だ。苦し紛れの逆転策として、ワンターミナル構想が浮上したのだ。
　総じて、「新しい成田空港構想」は、第３滑走路建設計画の破綻を繕うものとしてある。これまで見てきたように、老朽化しボロボロとなった成田空港は没落の泥沼に沈むしかない。「経済安全保障」を前面にした新たな巨大空港の建設は、日帝のアジア勢力圏化と中国侵略戦争―世界大戦に向けた労働者人民に対する攻撃だ。反対同盟と共に軍事空港粉砕、成田空港の廃港をかちとろう。