空港拡張差し止め裁判 強制執行弾劾し激突 「新滑走路建設やめよ!」
週刊『三里塚』02頁(1107号02面04)(2023/03/22)
空港拡張差し止め裁判
強制執行弾劾し激突
「新滑走路建設やめよ!」
千葉地裁民事第3部(内野俊夫裁判長)で3月3日、「空港拡張差し止め裁判」が開かれた。この裁判は、三里塚芝山連合空港反対同盟が被告の国と成田空港会社(NAA)に対し、①これまでのB’滑走路差し止めを求める「第3誘導路裁判」に、②成田空港機能強化に伴う国の施設変更許可(2020年)の無効確認と、滑走路建設など一切の工事差し止めを求める新訴訟を併合し、新たに始まったものだ。
そして2・15天神峰強制執行後初の反対同盟の裁判闘争として、激突不可避の場となった。
開廷前から、被告席に居並ぶ国とNAA代理人弁護士に対し、傍聴席を埋めた人々から「農地を返せ!」「農民殺し!」「恥を知れ!」との糾弾がたたきつけられた。警備に動員された職員が「注意」しても、従う者などいない。
内野裁判長が開廷を宣すると、すかさず反対同盟決戦本部長の太郎良陽一さんが「千葉地裁に問いたい。なぜ強制執行を夜間にやったのか。執行官は市東さんに通告したのか。答えよ!」と詰め寄った。職員らが制止にかかり、対して全学連の学生たちも次々と前に踏み出して大衝突となった。裁判長は太郎良さんに退廷命令を出したが、農地強奪に対する怒りがこの法廷を十数分にわたり、実力闘争の場へと変えた。合わせて10人を超える国・NAAの代理人弁護士たちは、おのれの罪深さを自覚し青ざめた顔で口をつぐんでいる。
反対同盟顧問弁護団は、強制執行に対する傍聴者の怒りは当然であり、また裁判所入り口で行われていた不当な身体検査・所持品検査が、憲法第35条に違反する傍聴者への権利侵害であることを突きつけた。
続いて弁護団は、準備書面(47)を陳述した。
最初に2・15強制執行の根拠となる2021年の請求異議裁判の上告棄却判決、22年の新やぐら裁判の仮執行付宣言付き東京高裁判決が誤っており、小作人の同意のない農地の取得は違法・無効と断じた。そして2・15の夜襲の経緯を「執行完了」まで詳述し、農民・市東さんの営農権をはく奪し、尊厳を侵害する過酷執行であったことを突きつけた。
食糧危機深刻化
さらに成田空港建設そのものが、「交通は農業に優位する」「農民を追い出し、農地をつぶす」との国の姿勢のもとに進められてきたこと、それが今や農業・地方を衰退するにまかせ、「食料は金の力で世界中から買いあさればよい」との日本政府の「拝金主義」にいたっていることを指摘した。だがウクライナ戦争長期化のもとで世界の食料危機は日々深刻化しており、農水省元幹部からも「日本が一番金持ちで、なんでも買い集めることができた時代は終わった」との発言が聞かれる。この時期において推進がもくろまれる「農民を追い出して滑走路をもう一本」という機能強化策が、根本から誤っていることを強調した。さらに弁護団は、NAAが空港周辺での騒音調査結果のデータとして数字を羅列した1500㌻もの大部の書面を出してきたことに対し、「表計算ソフトを使って整理し出し直せ」と強く求めた。ふて腐れたようにやる気のなさをにじませるNAA代理人に対し、傍聴席からも弾劾が突きつけられた。次回期日を6月2日、 次々回を9月8日として閉廷。
千葉県弁護士会館で伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。
弁護団それぞれがさらに国とNAAを徹底的に追い詰めていく決意を表した。動労千葉の山田護特別執行委員が連帯のあいさつを行い、2・15強制執行の悪らつさ非道さを弾劾し、労農連帯を一層強化して闘うことを誓った。関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会の発言に続き、全学連の学生が「昨日、3人の学友の勾留理由開示公判が開かれたが、裁判所に初めて来た仲間も不当逮捕に怒り先頭で決起した」と力強く報告し、今後も実力決起の先頭に立つ決意を表した。
最後に太郎良さんが、「2・15強制執行でわれわれは敵の攻撃を迎え撃ち、それぞれが想像以上の力を発揮して闘った。この団結をもっと広げれば勝てる。農地は金じゃない、金に換えられない。この反対同盟の基本的考えが今の社会を変える力になる。闘いはこれからだ。コンクリートをはがして、農地を取り戻そう」と訴え、3月26日に芝山文化センターで集会・デモを行うことを告知した。
集会後、参加者全員で千葉地裁前に陣取り、怒りのシュプレヒコールをたたきつけ、勝利を誓い合った。
支援連と全学連は、3カ所の警察署に勾留中の全学連への激励行動に向かった。