明日も耕す 「国家戦略特区」が破綻 それでも企業は農地取得へ
週刊『三里塚』02頁(1104号02面04)(2023/01/23)
明日も耕す
「国家戦略特区」が破綻
それでも企業は農地取得へ
昨年12月22日の国家戦略特区諮問会議で、企業による農地取得の特例は全国展開しないことになった。国家戦略特区による企業の農地取得は破綻に終わったが、企業に農地を開く動きは形を変えて強まっている。
国家戦略特区に指定された兵庫県養父市で、農地を取得した企業は6社、1・65㌶にとどまった。6社の経営面積のうち取得した農地は5%に満たない。
農地貸借による企業参入が進む中で、農地を取得する必要性は乏しく、全国展開は強行することができなかった。
ところが戦略特区での実現を見送った代わりに、形を変え、「構造改革特区」で企業農地に道を開こうとしている。
2002年に創設された構造改革特区は、国が特区を指定する国家戦略特区に対して、自治体が計画を申請する。形は変われど狙いは同じで、養父市のような農地取得の特例が活用できるよう、今度の通常国会で構造改革特区法などを改悪しようとしている。
また、農地法の農地所有適格法人について、農業関係者以外の出資割合を半分未満とする制限を緩和するよう、規制改革推進会議が求めている。 規制緩和がまかり通れば、これも企業の農地支配につながるものだ。
なし崩しに企業農地へ道を開くことを許してはならない。
空港頼みの千葉
農地を企業が使えるようにするという点で、今もっとも看過できないのは、2021年1月15日に千葉県が行った国家戦略特区提案だ。これは成田空港の機能強化を後押しして、「インターチェンジや物流基地に適した土地は、現行法を飛び越えて農地転用できるようにすべき」というものだ。
昨年7月28日と9月20日に国家戦略特区ワーキンググループで議論され、22年度内に何らかの結論を出すという。
中身は露骨な〝空港ありき〟で、「成田空港の本体施設と民間物流施設は一体。国家プロジェクトなのだから、同様に規制が緩和されるべき。迅速に進めるため、手続きも非常に簡素化したものに」というのだ。
そして、成田で規制緩和の先例をつくり、他にも広げようというのだ。
「農地強奪」叫ぶ
ワーキンググループのヒアリングで熊谷俊人千葉県知事は、成田空港を「アジアや世界で戦っていくために、何十年と我が国が多くの投資、努力を重ねてきた唯一の場所」と位置づける一方、農振法の農地保護の規定を「障壁」とまで言いなす。許せない! 国策のため企業のためなら農地を奪ってもいいのか! 市東さんの農地問題と完全に重なる。そして必ず戦時収用・徴発につながっていく。
市東さんの農地取り上げは、国家・企業による農地強奪の先駆けだ。
新たな農地強奪を許すな! そのためにも強制執行を阻止して市東さんの農地を守り抜こう。