明日も耕す 農業問題の今 「食料安保」は戦争への道 国防論議に引き込まれるな
週刊『三里塚』02頁(1103号02面03)(2023/01/09)
明日も耕す 農業問題の今
「食料安保」は戦争への道
国防論議に引き込まれるな
ウクライナ戦争や新型コロナを契機とする食料危機で、食料安全保障が盛んに論じられるようになった。政府も対策を打ち出す中で、「安全保障を語るなら食料こそ大事」という言説も増えてきている。
昨年12月27日、岸田政権は食料安全保障強化に向けた政策大綱を決めた。輸入依存度が高い食料や肥料、飼料の国産化と安定供給に向けた構造転換対策を継続的に進めることを方針とし、毎年の予算編成過程で対策費を確保するという。
これに先立つ第2次補正予算では、1642億円の食料安全保障強化構造転換対策が講じられた。しかし防衛費2倍化の中で今後も確保されるのか、はななだ疑問だ。
鈴木宣弘・東京大学大学院教授は「廃業寸前に追い込まれている農家に今必要なのは、飼料国産化推進の前に緊急の赤字補てん、無利子・無担保融資の拡充」と批判する。食料安保対策は農民のための対策ではない。
軍備か農業か?
その上で鈴木氏は、「不測の事態に国民の命を守るのが国防というなら、国内農業生産の確保こそが安全保障である」と主張する。農業振興予算を「食料安全保障基礎支払い」のような形で投入し、食料にこそ5兆円の予算を付けられるようにすべきだというのだが、この論立てには疑問を呈したい。
軍備に金をかけるのか農業に金をかけるのか、どちらが安全保障に大事かという話は、岸田政権が中国侵略戦争に向かうこの時、戦争推進の論議に取り込まれるだけだ。
もっとあからさまなのが、12月26日付農業新聞に掲載された山口二郎法政大学教授の論説だ。
山口氏は1930年代後半の狭義国防と広義国防をめぐる論争というものを紹介する。
狭義国防とは、軍備増強で防衛力が強化できるという立場だ。広義国防とは、経済的生産力を強化し、国民生活を安定させて国力を充実させることが、防衛力の源泉だという考え方だという。
そして「防衛力の源泉は国民生活の安定であり、経済の各分野における生産力の向上だという考え方は、我が防衛力を考える際の重要な視点」「基本的食料は自国で生産することこそ安全保障の土台だから、現代版の広義国防のあるべき姿を」というのだ。
基本法改悪狙う
いくら「農業が大事」といっても、それが戦争のためとなったら意味合いが変わってくる。何より岸田政権は「国民を守ることが国防」とは考えていない。ブルジョアジーの利害を貫くために、いかに戦争を遂行するかが第一であり、食料安保はその一環だ。
岸田政権は「農政の憲法」とされる食料・農業・農村基本法を見直し、6月に改正案を取りまとめ、23年度中の国会提出を目指すと言う。
改憲と一体の基本法改悪を許すな!
なすべきは食料安保の論議ではなく、戦争に突き進む岸田政権打倒だ。