明日も耕す 農業問題の今 鳥インフルに無策な農政 養鶏農家に廃業危機迫る

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週刊『三里塚』02頁(1102号02面04)(2022/12/26)


明日も耕す 農業問題の今
 鳥インフルに無策な農政
 養鶏農家に廃業危機迫る


 今年も鳥インフルエンザが猛威を振るっている。最近のペースで発生が続いた場合、今シーズンの殺処分数は過去最多となった2020年から去年にかけてのおよそ987万羽を上回ることが懸念されている。

 先月、青森県三沢市の養鶏場で137万羽のニワトリが殺処分された。一昨年千葉県で処分されたおよそ116万羽を上回り、1か所としては過去最多となる。
 12月17日に埼玉県深谷市で確認されたもので、すでに今季38例目だ。
 何より一昨年と違うのは、食料危機が叫ばれ、飼料をはじめとする生産資材の高騰など経営圧迫が深刻化している中での鳥インフルエンザだということだ。
 先日、鶏卵と鶏肉の卸売価格が、1993年以降で最高値を記録した。
 農水省は「処分されたのは全国の1億4千万羽の2%程度。現時点で市場への影響はない」という。野村哲郎農相は「正月が明ければ(価格は)落ち着く」との見方を示したが、もはや価格の問題ではない。
 養鶏農家は「うちの鶏舎で今年鳥インフルが発生したら、国や県からの支援があったとしても生産を再開できるかわからない」と話す。

支援が足りない

 鳥インフルが発生した農家への補助はある。だが、きちんと防疫対策をとっていたか、十分な消毒体制をとっていたかなど重箱の隅をつつくように検査され、不十分なら交付額が減らされる。
 そして農水省やマスコミは、今も「衛生管理の徹底」ばかり声高に叫ぶ。それでは一昨年と何も変わらない。
 鶏のケージ飼いのような高密度・大規模な飼育=工場型畜産は、飼育されている鶏の免疫力が低い上に、宿主が多ければウイルスは様々な変異を起こす。どんなに防御しても、すり抜けて感染するリスクは常にある。
 大手商社の大規模競争、安売り競争のあり方を変えない限り、根本的には何も解決しない。

軍事費は2倍化

 これを見直すものとして、アニマルウェルフェア(動物福祉)に基づく養鶏があるが、皮肉にもこれに積極的なのが食品や小売の大企業だ。
 「栄養素や味に優れている」などの付加価値でブランド化し、新たな金もうけをねらう。有機農業のブランド化と同じ発想であり本末転倒だ。
 中小の養鶏農家が経営を維持し、工場型畜産から転換できる支援こそなされるべきだ。
 農業を支えるために、コスト高による赤字を補塡(ほてん)し、政府が在庫を買い上げ、国内外の援助に回す仕組みは、他国では当たり前の政策だ。
 「輸出5兆円」や「デジタル農業」、飼料国産化推進の前に、足元で踏ん張っている生産者を支えて今ある農業を守ることが先決ではないのか。
 農業のあらゆる分野で廃業が相次ぎ、自殺者まで出ている。
 もうとっくに限界を超えている。軍事費を2倍化するな! 命を守る農業に回せ!
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