演習場を再び中国侵略戦争の拠点にさせない 映画「日本原 牛と人の大地」に出演 内藤大一さんインタビュー
演習場を再び中国侵略戦争の拠点にさせない
映画「日本原 牛と人の大地」に出演
内藤大一さんインタビュー
陸上自衛隊日本原演習場内で耕作を続ける内藤秀之さんを描くドキュメンタリー映画「日本原 牛と人の大地」に出演された、長男の内藤大一さんにお話を伺った。
1909年に陸軍が設置
----日本原演習場について教えてください。
演習場ができたのは日清・日露戦争後の1909年。日本帝国主義の陸軍省が演習場として265万坪(約876万平方㍍)を買収し、抵抗した人もいたらしいのですが140戸が移転します。田んぼは国有地にしてその耕作権は認めると。面積は東西6㌔、南北5㌔で中国四国地方では一番大きい(約1450万平方㍍)です。
----日本原演習場の中にある耕作地では何を育てているのですか。
もともとは田んぼだったのですが今は転作しています。牧草が主で、さつまいもを育てたり、ひまわりを植えています。
----演習場の中に耕作地を持つ農家は何軒くらいありましたか。
昔はそこら中全部田んぼで十数軒はあったと思います。自分が大学に入った90年の頃はまだ田んぼがありましたが、次に実家に帰ったときにはうちの田んぼしかないというような状況になっていきました。自衛隊のPKO派兵(91年が初)が強行された頃に、演習場の中の田んぼと外の田んぼの大規模な交換が行われました。だけど、うちは明確に自衛隊、演習場に反対だったので応じていません。
----映画の中で耕作地に入ろうと自衛隊とやりあうシーンが印象的です。
これまでは、弾が飛んでくるから安全確保のために着弾地域だけ立ち入り禁止にしますというやり方をしていました。2006年の第1回日米共同訓練の時に初めて全面立ち入り禁止にしたんです。
だけど、地元に協定みたいなのがあって向こう側は「危険だから立ち入り禁止にする」という理屈を立てている。だから、「誰にとって何が危険なのか」と聞いているのです。
海兵隊との共同演習激化
----米軍はどこから?
米軍岩国基地所属の海兵隊です。自衛隊と海兵隊の共同演習に加えて、2018年から米海兵隊の単独演習(毎年実施)も行っています。
----オスプレイも来ていますか?
滋賀県の饗庭野(あいばの)演習場には来ているようですが、日本原では見ていません。
----どんな訓練をやっていますか?
自衛隊と米軍が重機を持ってきてザーッと整地して臨時のエアポートのようなのを作って、そこにヘリが着陸するという訓練です。本当はオスプレイでやりたいようです。
----それは海外に攻めていくための訓練ですよね。
岩国の海兵隊は朝鮮半島に行くというようなイメージで日本原に来ています。そもそも、日本原は朝鮮半島に地形が似ているからとここで訓練をし侵略の拠点になったんです。実際、1910年に朝鮮植民地化していますよね。
----映画を見た人に伝えたておきたいことはありますか。
神社については説明が必要です。演習場の中の神社は池も含めて防衛省の土地(国有地)ではなく民有地になります。地元の部落の所有になっていて守らないといけないという拠点であるのですが、そこが他方で、天皇制の拠点にされている。天皇の代替わりを賛美するようなのぼりを神社本庁かどこからか持ってきて付けていましたよね。向こうは天皇制の拠点として神社を組織しようとするし、こちらは拠点だから守らないといけない。そのせめぎ合いの焦点の一つとして神社があるんです。
歴史的にも奈義町は1961年に自衛隊誘致決議を議決したり、1969年には「大日本帝國憲法復原決議」を可決しています。それは天皇制と関連しているんです。他方で、私たちは紀元節粉砕、天皇制打倒という立場で毎年2月11日に演習場撤去を求める集会を開催しています。
----集会でふるまっていた「山の牛乳」は本当においしそうでした。酪農はいつ頃から。
おじいさんの代に1〜2頭から始めてだんだん牛を増やし、一番多い時で40頭くらい飼っていました。80年代くらいから牛乳を加工するところに頼んで低温殺菌をやるようになりました。
今は米にしても食管法が解体されゆるくなっていますが、その当時は牛乳は全量を組合に出荷して、そこから組合と大手と取引して全部出すというそういうルートしかありませんでした。
それを低温殺菌したいからと、津山市の中本牛乳というところで加工ができる施設があると聞きお願いしたんです。普通はパイプの中を牛乳がピュッと数秒通るだけなんです。低温殺菌の場合は63度で30分くらいだから大きい鍋でゆっくりやらないといけない。その代わりタンパク質とかが変性しないからおいしいと言われています。
----和牛の繁殖はどんなことをやっているのですか。
「お母さん牛」を飼うんです。それに液体窒素で保存している種を受精師(家畜人工授精師・国家資格)さんが来て種付けをします。人工授精です。その後、人間とそれほど変わらないくらいの期間お腹にいて生まれます。8カ月間、自分の所でエサを食べさせて飼うわけです。240日で体重300㌔が目標です。競りにかけ、今度は肥育農家が2歳になるくらいまで育てます。
----生まれた子どもを2歳まで育てることはなぜしないのですか。
肥育農家の方が大規模で「高校生」くらいの健康な子どもを買ってきた方が手っ取り早いんです。繁殖農家は種付けから妊娠、出産、子育てと大変なんです。人間と同じで種が付かないとか、妊娠しても流産するとか、赤ん坊の世話とか自然に影響される部分が大きい。要するに妊婦さんや赤ちゃんの世話は大資本にはできない。その大変な部分を小規模農家に押し付けているのです。
「撤去し、牛の放牧場に」
----最後に訴えたいことを。
日本原演習場に弾薬を供給している三軒屋弾薬庫が岡山理科大学の壁を接した隣にあります。中四国地方では陸上自衛隊最大の弾薬庫です。500㍍以内には保安施設以外の建物が建てられない最も危険な大爆発(核兵器を含む)を起こす危険度「1」の弾薬庫がたくさん並んでいます。今、日本全土に配備すると言われている中距離(核)ミサイルを日本原周辺に配備する可能性もゼロではありません。
日本原演習場はかつて戦争のための人を殺す訓練する場として青年をアジア、中国侵略戦争に駆り立てる拠点でした。
この間、日本原で日米合同軍事演習や米軍単独の軍事演習が繰り返されています。岸田政権の下でふたたび中国侵略戦争の拠点とすることは絶対に阻止しなければなりません。
中国東北部に出征したうちのおじいさんは「日本原演習場を撤去して牛の放牧場にしたい」と語っていました。その思いを継いで今後も闘い続けます。
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岡山在住の映画監督・黒部俊介さん初監督作品=映画「日本原 牛と人の大地」は全国各地で公開中。詳しくは公式サイトでご確認下さい。鑑賞券は「東風オンラインショップ」で1300円で購入できます。